<阪神0-3西武>◇28日◇甲子園

 どん底を見た男の魂の一振りだった。0-0の7回2死一、二塁、西武片岡易之内野手(29)は8球目の150キロ直球に反応。ボールは切れずに、右翼ポール際に吸い込まれた。「自分でもびっくりするくらい。来た球に反応できた」。阪神ファンの失意を示すように、フライングで放たれたジェット風船が揺れ落ちた。

 シーズン開幕に間に合わせるために、昨年10月に左肩の手術を受けたが、復帰への道のりは苦難の連続だった。痛みとの攻防は一進一退。「大丈夫かなって思って起きても、やっぱり痛くて…。それが本当につらかった」。2月の春季キャンプは2軍スタート。焦りからか、腰痛にも襲われた。

 オープン戦中の3月、スポットライトを浴び続けた男の“本拠地”は、薄暗い室内練習場だった。「なかなかね…」。多くを語らなかったが、開幕への希望は捨てなかった。約1カ月後の1軍復帰。自身の思いを重ねたのが、今季から登場曲に決めたEXILEの「Rising

 Sun」だった。歌詞中にある「陽はまたのぼっていく」の1フレーズに、ケガから復活する自分の姿を投影した。

 復帰後は2番だったが、23日の巨人戦から1番に“復帰”。5試合で2度目の猛打賞をマークした。「(2番では)無駄に考えすぎちゃって。今はいいバッターが後ろにいるから、しっかりつなごうと」とふっ切れた。試合開始前、平尾から「これ飲んだら打てるぞ!」と言われ、キウイジュースを口に含んだ。「飲めって言うんで。平尾さんのおかげですね」。ムードメーカーに笑顔が戻った。【久保賢吾】