<阪神3-1オリックス>◇8日◇甲子園
アニキにハットしてグー!
阪神金本知憲外野手(44)が、これぞ4番の一撃という逆転3ランを豪雨の甲子園右翼スタンドにたたき込んだ。珍しく、右手親指を突き上げる「サムアップ」ガッツポーズまで出た、値千金の3号決勝弾。しかも弟分新井さんの仇(かたき)を取る…つもりはまったくなかったと爆笑お立ち台で、ずぶぬれの虎ファンを大喜びさせた。
すべてを帳消しにした。ひと振りでみんなを救った。これぞ4番、やはり、アニキだった。1点ビハインドの7回1死二、三塁、金本がオリックス平野の速球をしばき上げた。高々と上がった打球は右翼スタンド中段まで飛んだ。今季、初めて甲子園で披露した1発は勝負を決める3号逆転3ラン。本拠地を埋めたファンが熱狂する中、珍しく拳を握って親指を突き上げるガッツポーズをつくった。
「最高の当たりでした。まあ、あそこでホームランなんて想像もしていなかった。一番いい結果でよかった。なかなか結果が出ずに苦しみましたが、今日は良かったです」
お立ち台でおどける金本にファンは喝采を送り、ベンチは感謝していた。逆転弾が出るまでは最悪の流れ。無死二塁から2番柴田が右中間へ二塁打を放ったが、二塁走者の平野は何と三塁ストップ。同点ホームインを信じていたスタンドは騒然とした。5回には送りバントを失敗し、併殺に倒れていた平野は自分を叱咤(しった)するようにしきりに首をかしげていた。ベンチも一様に渋い表情。そんな流れを変えたのは、やはり、この男だった。
「いろいろなミスが出た中で全てを帳消しにしてくれるような、これぞ4番という大仕事をしてくれた」
和田監督も“最敬礼”する1発。ここ3試合で2本目。右肩棘上(きょくじょう)筋断裂という絶望的なケガを負った「鉄人」はそれでも立ち上がり、自分の本来の姿に、1歩ずつ近づいている。
その舞台裏での苦悩は、想像を絶するものがある。金本は毎朝、自宅を出ると愛車で球場へと向かう。その車中で1人、右肩の“悪魔”と向き合う。
「ハンドルがここまで回ったら調子がいいんよ。でも、そこまで全然、いかない日もある。守備は何とかなる。でも、打撃だけはどうにもならん。打とうと思っても筋肉が反応しないから、バットが出てこない」
右手で握ったハンドルを反時計まわりに「11時」まで回せるか、どうか。箸を持つ右手を左手で支えなければならないほどだった昨年を考えれば大幅な回復だ。それでも、爆弾のような右肩に、日々、期待と落胆の間を行ったり来たりさせられている。
「新井選手が内角に危ないボールを投げられて、なんとか仇をとってやろうと…とはまったく思っていませんでした」
お立ち台では最後まで大観衆を笑わせた。すべての視線を集める背番号「6」は、舞台裏の苦悩などみじんも感じさせなかった。それは4番の背中だった。【鈴木忠平】
▼阪神金本がオリックス平野から初本塁打を放ち、通算224人目の投手から1発を記録。多くの投手から本塁打を打った記録は(1)T・ローズ228人(2)金本知憲224人(3)清原和博、山崎武司=各223人。金本が単独2位となった。



