<ヤクルト0-2巨人>◇20日◇長野

 やはり頼りになるのはこの男だ。巨人内海哲也投手(31)が、7回2/3無失点で4年連続となる10勝目を挙げた。7安打を許したが3併殺などで要所を締めて、2回にロペスの15号2ランで挙げた2点を守り抜いた。苦しい夏場に粘り強さを発揮するエースらしい投球。阪神が敗れたため、優勝へのマジック30が再点灯した。

 エースの風格が漂ってきた。内海が真骨頂を見せつけた。最低限の仕事と位置づけた7回を2/3超える112球の粘投。自身4年連続7度目となる2ケタ勝利を手にした。「今年は野手の方々に助けてもらって勝ってきた。ここからは僕が勝たせるような投球をしたい」と、ここまでを振り返りつつ先の戦いを見据えた。

 粘った。1回。安打と2四球で2死満塁のピンチを背負った。「前回の悪い流れを引きずってしまった」。直球は高めに浮き、変化球の制球も乱れた。危機的状況で6番山田との対戦。2球続けたツーシームで、なんとか遊ゴロに打ち取り、難を逃れた。

 粘りきった。2回以降も苦しい状況は続く。4回まで毎回走者を出した。だが、ここでも内海が流れだけは死守した。「とにかく低めにとだけ意識した」と、3イニング連続の3併殺で切り捨てた。「粘りは僕の持ち味。なんとか、それができたかなと思います」。自身の転機とともに相手の戦意も削っていった。

 地道な努力でたどり着いた10勝目だった。交流戦では「あのころはどん底でした」と、自ら認めるほどの不調が続いた。3連敗で約1カ月、勝ち星から見放された。改善に向けて“足もと”から見直した。「かかと体重になってしまっていた。それを改善するために自分で作った」と、ロッカールームで使用するスリッパのかかと部分を、ばっさりはさみで切った。不調からの脱出へ、グラウンド外の時間も無駄にしなかった。

 巨人のエースで2年連続最多勝投手。まだまだ、こんなもんじゃない。「少しずつ自分のペースで投げられるようになってきた。でも、まだいいとは思っていない」と、現状に納得はない。チームトップでルーキー菅野に並ぶ10勝も「(菅野)智之とは勝ち方が違う。あいつはチームを救ってきた。僕は、ここからそういう投球をしていかないといけない」と、自覚だけをにじませた。

 2年連続の頂点を目指す戦いは、少しずつ佳境が近づいてきた。実力派左腕が自らの役割をきっちり果たし、優勝マジックを再点灯させた。【為田聡史】

 巨人原監督(内海について)「効果的に内野ゴロを打たせてダブルプレーをとれた。チームも彼も助かりましたね。週初めの先陣としていいスタートが切れた。イニングも申し分ない。呼び水になってくれるといいね。『他のスターターたちよ』と」。

 ▼内海が10年から4年連続7度目の2ケタ勝利。巨人で4年連続2ケタ勝利は01~04年上原以来となり、左腕では76~79年新浦以来、チーム34年ぶり。通算7度以上はチーム11人目で、左腕では11度記録した中尾に次いで2人目だ。今季、地方球場で登板した時の内海は、5月12日DeNA戦(新潟)が9回0失点、8月6日DeNA戦(郡山)が7回0失点、20日ヤクルト戦(長野)が7回2/3を0失点。3戦3勝で通算23回2/3を投げて1点も取られていない。