北の大地で野球と陸上短距離の異色合同トレが実現した。ソフトバンク内川聖一外野手(31)が13日、北海道・恵庭市で陸上女子短距離のエース福島千里(25=北海道ハイテクAC)との自主トレを公開した。この日が3日目で最終日。走ることへの意識改革を果たした内川は、福島に恩返しの来季日本一を誓った。

 トップアスリートとの3日間の修業で内川が大きく変わった。「走ることへの意識が変わりました。内川は走れる選手になったなと言われるようになりたい」と充実した笑顔で振り返った。外は一面銀世界。福島が所属する北海道ハイテクACの施設は室内に100メートルトラックやトレーニングジムを完備している。

 トラックを使ったダッシュでは福島と勝負。ダッダッと力強く走る内川の横をスタスタスタと足音をほとんどさせずに高速回転の福島が抜き去っていった。「人に置いて行かれる。背中しか見えないってこういう感じなんだな」と汗だくで苦笑い。日本一速い女子のスピードを体感した。

 内川もミニハードルやコーンを歩幅に合わせて置いて走ったことで、足の回転への意識が高まり加速力がついた。プロ13年で年間2桁盗塁がない打撃職人が「自分に合った歩幅があるんだなとびっくりした。投手を見る目線も変わるし欲を出していきたい」と走塁に結びつけた。今回の練習メニューは今後、シーズン中まで継続する考えだ。

 2人が栄養面のサポートを受けるサプリメント大手ブランド「ザバス」が仲介役となり実現した、異色の合同トレ。朝から夕方まで陸上女子たちと大声で笑いながら、楽しくみっちり、野球では使わない筋肉に刺激を与え続けた。

 新しい可能性を発見させてくれた福島への恩返しは、日本一しかない。福島は10月下旬に長崎国体に出場する予定。例年ならばクライマックスシリーズのファイナルステージが行われている。内川は「呼べればいいですね」と長崎から、本拠地ヤフオクドームへ招待するつもりだ。そのためにはリーグ優勝が絶対条件。福島も「スタンドから『今です盗塁っ』て声をかけたいですね」と楽しみにしている。内川のやる気が加速した。【石橋隆雄】<合同トレの主なメニュー>

 ◆バスケットボール

 ウオーミングアップ、クールダウンの代わりに午前、午後に1時間ずつバスケットボールで汗を流した。3対3のゲーム形式で午前は福島らと対戦。午後はジュニアスクールの女子高生と対戦し、元気さに圧倒される。楽しみながらも常に前後左右に動き続けた。

 ◆陸上

 福島だけでなく短距離の北風沙織(28)、ハードルが主な野村有香(26)と一緒にダッシュ。ミニハードルを1人ずつ走り、女子選手たちの足の運びなどを観察。続いてミニコーンを間隔を広げて7個置き4人で競争。この時、福島らはクラウチングスタートだが、北海道ハイテクACの中村宏之監督(68)が野球に生かせるようにと、内川だけは走者がスタートを切る形を取った。約20本で最後の数本は塁間(27・4メートル)で競争した。

 ◆ヒモで宙に浮く

 天井からつるしたヒモで両足をそれぞれ固定し、両手を離し空中で膝を曲げ伸ばしする。バランス感覚が要求され初日はまるでバランスが取れなかったが、3日目は悠々と乗りこなした。

 ◆テニス

 ダブルスで試合を行う。福島とコンビを組んで連戦連勝。相手を3人にしても負けなかった。軟式球を思い切り打つことで腕も鍛える。