<ロッテ6-2巨人>◇24日◇QVCマリン

 絶景かな!

 ロッテの五右衛門こと石川歩投手(26)が、巨人打線を7回4安打、無四死球で無失点に抑え、4勝目を挙げた。昨秋ドラフトで指名された縁のある巨人に対し、1位指名にふさわしい投球を披露。チームは5連勝で、勝率も5割復帰。お立ち台からの景色は、絶景だった。

 今季最多の超満員となった客席をお立ち台から見渡した。感想を聞かれた石川が「絶景です!」とこたえると、右翼席から大歓声が起こった。石川五右衛門の決めぜりふ。「絶景かな!

 絶景かな!」。それを新人投手なりにアレンジして、自分の言葉で表現した。

 絶景を見られたのは、巨人打線を封じたからだ。9メートルの強風に「直球がいってない感じがした。スライダーは曲がりすぎるし、シンカーは曲がらなくなる」と苦しみながらの投球。だが、バッテリーを組んだ江村は捕手の目線から「直球がシュートしたり、真っすぐ来たりした。それがかえって良かったのかもしれない」と海風効果を口にした。

 ドラフトで指名してくれた巨人への意識はとっくに吹っ切っていた。1月の新人合同自主トレの時だった。連日、テレビカメラが押し寄せる巨人の新人合同自主トレの様子を知った。「毎日、あんなに注目されるのは大変ですね。僕はロッテで良かったです」。くじ運次第では、注目の中心にいたかもしれない。しかし、のどかなロッテ浦和球場で、自分の調整にのめり込める時間をありがたがった。欲しいのは世間の注目ではなく、確かな実力を身につけることだった。

 4月27日の日本ハム戦(札幌ドーム)以来、白星から遠ざかっていた。「チームに迷惑をかけていたので、とにかく全力でいこうと思ってました」。チームのことを思う気持ちが、直球のキレを取り戻させた。このチームで活躍するためには必須とも言える強風との付き合いも乗り越えた。サンデー五右衛門は、土曜日に配置換えして風とともに復活した。これからも絶景を見続ける。【竹内智信】