<西武2-4日本ハム>◇1日◇西武ドーム

 帰ってきたベテラン勢が、7月反攻の火付け役になった。日本ハム小谷野栄一内野手(33)が右膝内側側副靱帯(じんたい)損傷から2カ月ぶりに1軍に復帰し、即打点を挙げた。「3番・三塁」で出場し、3回1死一、二塁で勝ち越しの左前適時打を放った。1カ月半ぶりの登板となった武田勝投手(35)は、5回5安打2失点で約2カ月ぶりの白星となる2勝目。西武とのカード初戦を制し、チームは勝率を5割に戻した。

 因縁の地で、満面の笑みを浮かべた。悪夢を振り払う、再出発の一打を放った。小谷野が食らいついた。同点の3回1死一、二塁。外角低めのスライダーを引っぱった。決勝点となる左前適時打。一塁塁上で思わず白い歯がこぼれた。「全然、覚えていない…」。無我夢中だった。7回の守備で交代するまで全力プレー。死力を尽くした。

 ちょうど2カ月前だった。5月1日の西武ドーム。本塁クロスプレーで右膝内側側副靱帯損傷。くしくも同カードで1軍復帰した。「西武ドームからは、止めていただきたいなと思った」と笑う。プラス思考でとらえた。「何か意味があるのかなと」。決勝打でヒーローに。苦い記憶は、消し去った。

 早期復帰へ、フライング気味に始動した。故障から8日後の5月9日。2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷の室内練習場。バットとグラブを持って登場した。右膝には包帯が巻かれたまま。「まだ、ダメと言われているけど」。過度な運動は医師から禁止されていたが、軽くバットを振り、そっとキャッチボール。「遊びだよ」。さらに打撃マシンへ。速い球を見るだけだったが「目は慣らしておかないと」。復帰後を想定し、やれることから始めた。2軍戦で復帰3試合目の6月21日ヤクルト戦(鎌ケ谷)。バックネット裏で見守っていたトレーナー陣がさけんだ。「止めてくれ」。本塁へスライディングする小谷野の姿があった。「本能だね」。どんな状況でも手を抜かない。できる限りを尽くし、この日を迎えていた。

 栗山監督も分かっていた。「本当に一生懸命やってきた感じが出ていたよね」と感慨に浸った。2軍で調整を続けてきた先発の武田勝、体調不良だったミランダも活躍。役者が帰ってきて勝率も5割に復帰した。「自分の中で今日の試合は意味があった。何が何でも勝ちたかった」。7月攻勢へ、欠かせない戦力が頼もしく戻ってきた。【木下大輔】