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嶋の本塁打は球界の今あるべき姿

開幕戦で3点本塁打を放った嶋基宏捕手はヒーローインタビューの後、ファンの声援に応える。右は勝利投手の岩隈久志
開幕戦で3点本塁打を放った嶋基宏捕手はヒーローインタビューの後、ファンの声援に応える。右は勝利投手の岩隈久志

 今年は多くの人々がプロ野球の開幕に関心を持ち、待望してくれました。節電による日程変更は今後も続きますが、12日の同時開幕は大成功だったのではないでしょうか。変則日程の中、チーム、ファンそれぞれの思いを込めた1年の始まりです。

 今年はロケットスタートと言われるような連勝チームはなく、各チーム均衡したスタートとなりました。開幕カードの勝利で最も注目を集めたのはやはり被災地でもある楽天。なかでも嶋選手の3ランホームランは選手会長としてチーム、また野球界全体の今あるべき姿を見せてくれたような感動的なものでした。彼は野村監督時代にキャッチャーとしての考え方をたたき込まれ、コーチ陣からもかなり厳しい教育を受けていました。時にはそれに悩み、何をすべきかを見失いそうになっていたこともあります。しかし彼は与えられたメニューを黙々とこなし、毎日少しずつ上ってきた結果、昨年は3割を超える打力を身につけました。そして感動的なスピーチまで披露した今年は、東北にまで気持ちが届くようなホームランを見せてくれました。その姿は楽天ファンならずとも拍手を送るシーンであったことと思います。

 個人的に期待する選手が多いオリックスは、今ひとつのスタートとなりましたが、チーム初勝利は横浜から移籍した寺原投手の完封劇でした。もともと甲子園を湧かせた鳴り物入りのルーキーだった彼も10年目を迎え、今年は3球団目となるオリックスでの開幕。ダイエー時代は年間7勝止まりでしたが横浜に移籍した1年目、07年には12勝を挙げ、翌08年は適役がいないことで慣れないストッパーに転向しながらも22セーブを挙げる活躍を見せました。その後ケガが付きまとう2年間を過ごしましたが、驚異的な体力、150キロをコンスタントに越えるストレート、毎日の努力を欠かさない姿はいずれ誰もが認めるエースとなるだろうと思っていました。今回の移籍も横浜にとってはもったいなかったのではと考えられますが、逆に必要としてくれたオリックスのためにこれまで以上の活躍を期待しています。

横浜好発進は森本&渡辺効果

対中日戦(4月14日)で中日・和田一浩の打球を好捕する森本稀哲
対中日戦(4月14日)で中日・和田一浩の打球を好捕する森本稀哲

 その横浜ですが、素晴らしいスタートとなりました。やはり森本、渡辺両選手の加入は思った以上の効果を現しています。2人のポジションはちょうど薄くなりかけ、かといっていないわけではないというところになります。要するに控え選手を代用して回していたポジションなので、2人が入ったことで層の厚さが出来たのです。昨年からの石川選手の成長も高い計算が出来ます。村田、スレッジ、ハーパーの3選手はセ・リーグの中でも引けを取らない力があります。ただ、今までもそうだったように問題となるのはピッチャーがどれだけ頑張れるか。1年間打ち勝つ事は至難の業です。ピッチャーが良ければ野球そのものの「品」が変わります。1点差を守り勝つ野球が出来れば間違いなく上位に食い込む力があるのですから、今年こそ変化の年にと期待を膨らませたいと思います。

仁志敏久(にし・としひさ)
仁志敏久(にし・としひさ)
 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。

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