佑の大きな勝因は四球の少なさ
- プロ初登板で力投する日本ハム斎藤佑樹
セ、パ両リーグともにだんご状態のスタートとなり、今後の予測がしにくい面白いシーズンになりそうです。さて、今年は即戦力としての期待が高いルーキーが数多く、既にその実力を発揮し始めた選手も少なくありません。中でも注目を集めた投手陣。日本ハムの斎藤投手、ジャイアンツの沢村投手、広島の福井投手は早々と初勝利をものにしています。
斎藤投手のルーキー一番乗りはファイターズファン、並びに斎藤ファンに留まらず、日本中の野球ファン待望の勝利だったのではないでしょうか。一言で言えばやはり「持ってる」と言えるでしょう。初登板で言えば沢村投手に遅れ、同日に福井投手も登板して初勝利。しかしながら話題となる一番乗りを持って行くあたりは、役者たる星のもとにあるとしか言いようがありません。期待が一人歩きすることもある現状では、1度の失敗が「やはりプロでは厳しいのか」という、無責任な批評もされかねない。そんな厳しい状況の中で見事に心の強さを発揮してくれた1勝です。斎藤投手の1番の売りは制球力。5イニングを6安打4失点という結果に関しては本人も納得はしていないとは思いますが、勝ちに繋がった大きな要因としては四球がゼロ(2戦目は6回1四球)だったということがあります。もし四球がいくつか出ていれば、当然ピンチはもっと多かったはずですし、ビッグイニングを作られていた可能性は大いに考えられます。守りのリズムが悪ければ攻撃にも影響し、効果的な点は期待が出来なくなってしまいます。四球を出さないことはチームの調和を育む条件の1つです。彼はそのことを既に理解しているようにも思えるのです。ただ、問題は今後にあります。データが作られていくことで癖や配球パターンが徐々に露わになっていくこと。そして技術的な懸念としてあるのは、四球を出したくないがためにボールが中へ中へと入ってきてしまうこと。彼の持つ制球力からすれば四球での自滅は考えにくい。どんなに悪くてもストライクゾーンで勝負して結果を待ちたいタイプなだけに、ストライクが集まりすぎてしまうことがかえって仇になることもあります。球威で勝負という場面は少ないでしょうから、いかにストライクゾーンを広く使うかということが今後の飛躍に関わってくると思います。
沢村「威力」支えるスライダー
- 4月21日の阪神戦で打者を打ち取り、ガッツポーズの沢村拓一
沢村投手のボールはやはり圧巻です。彼は斎藤投手とは逆に球威で勝負していくタイプですが、球威という簡単な表現ではなく「威力」と言えるものです。極端に言えば、困ったらど真ん中勝負でもいい。それくらいの勢いがボールに感じられます。そしていいピッチャーの条件の1つ、スライダーが素晴らしい。どんなにいいピッチャーでも真っ直ぐだけでは抑えられない。それを生かすボールが必要であり、真っ直ぐを生かした変化球が必要なのです。そのボールが先発型では大抵がスライダーであるので特定して言いますが、彼もまた最高のボールを引き立てるスライダーを持っています。今後の懸念としては、これまた斎藤投手とは逆に力んでの無駄球、延いては四球ということです。威力があるのでそう連打はされないと思われるため、自分でピンチを招かない事が勝てる要素となるでしょう。しかしこれだけ威力ある真っ直ぐがあると「真っ直ぐ行くよ」。そう言ってバッターに予告勝負を挑んでほしいと無理な希望を抱いてしまいます。若い力で日本中を盛り上げてくれることを期待しています。
- 仁志敏久(にし・としひさ)
- 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。
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