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雨天中止も選手には貴重な余暇

降雨ノーゲームとなり、雨を見つめる巨人・仁志敏久(2004年9月5日、甲子園球場)
降雨ノーゲームとなり、雨を見つめる巨人・仁志敏久(2004年9月5日、甲子園球場)

 例年よりずいぶん早く梅雨入りしてしまい、長い梅雨になるとのこと。毎年この時期に行われる交流戦はやはり雨の日が多く、レギュラーシーズンに戻る前の予備日は休みがあるだろうかとついつい先々を案じてしまいます。プロ野球選手にとって雨は恵み。わざわざ来てくれたお客さんには申し訳ないのですが、なかなか休む時間のないシーズン中では貴重な余暇です。 

 通常選手達はホームゲームのナイターであれば午後1時過ぎくらいには球場入りし、若い選手達であればもっと早く来てティーバッティングなどの練習をしています。試合前の練習というのは自分のバッティング練習の時間に合わせてウォーミングアップ、ノック、走塁練習などを行い、全体の練習が終わると遅い昼食をとりますが、その時間で4時過ぎ。選手によって食前か食後かは違いますが、大半の選手はそこで1度シャワーを浴びる。そして10分、20分休憩したところで試合前のミーティングが始まります。それが約15分~20分といったところでしょうか。ミーティング後はもうグランドに出てシートノック前のウォーミングアップが始まり、ノックが終わってやっと試合が始まります。

 ベテランになれば今日はノックはやらないとか、バッティングは少しだけと注文出来ますが、大半の選手はこのメニューの毎日です。確かに出番が少なければ練習はしておかなければいけません。しかし、試合に入るまでにやるべき事が多すぎて、練習から試合が終わるまでが一緒くたになってしまっています。選手によっては終わってからまたウエートトレーニングをやりますから、一日中、気が抜けないわけです。

松井が残っていてホッとした…

試合後、球場を後にする巨人・松井秀喜(2001年4月13日)
試合後、球場を後にする巨人・松井秀喜(2001年4月13日)

 私自身もそんな毎日を送っていたわけで、若い頃は試合後のトレーニングが終わるともう夜11時、12時ということはザラでした。だいたい最後に残っているのはいつも同じメンバーで、トレーニングを終えてロッカーに帰ってくると、コーチや裏方さんと「また最後だね。もうあと12時間後にはまた家出てるよ」そう言って笑っていました。その時いつも松井秀喜選手が膝をアイシングしながらスパイクやグラブを磨いている。私はいつも「良かった、まだ松井がいた」となぜか選手がいる事にホッとしながら風呂に行っていました。体力、気力があった頃の懐かしい思い出です。

 時間が足りないほどの毎日の中で、「中止」の一言は何よりの吉報なのです。「中止だって」なんていう冗談を言おうものなら本気で怒る選手もいるくらい。結局は後々試合はやらなければいけないのですが、目の前のほんの一時に大きな喜びを感じるものなのです。シーズンが始まれば見たいドラマはいつも録画。時間通りにドラマを見られる事が夢のように感じます。どうかファンの皆さん、時には中止も許して下さい。

仁志敏久(にし・としひさ)
仁志敏久(にし・としひさ)
 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。

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