05年ロッテ戦では不甲斐なさに涙
- この年の交流戦でロッテに5敗目を喫し、元気のない表情の堀内恒夫監督(当時)ら巨人ナイン(05年6月9日)
各チーム持ち味が良く出ていて非常に面白い交流戦となっています。やはり2試合ずつとなるといいピッチャーが次々と出るこということもあって緊迫した試合が数多く見られます。
私が現役時代、個人的には意外と健闘した印象があるのですが、チームとしての思い出は苦いものばかりです。交流戦が行われたのは2005年から。堀内監督時代の2年目となる年で、ちょうどジャイアンツが苦しい時でもありました。3年前には日本一にもなっていますが、その間ゴタゴタがあり、球界再編などの大きな問題が浮き彫りになった少し重たい時期でもあります。特に思い出されるのは千葉でのロッテ戦。05年は連続して大敗を喫し、それまでにはなかった屈辱感を味わいました。ピッチャーはボコボコに打たれ、野手はさほど点も取れず、まさに手も足も出ない負け方をしてしまったのです。正直、ジャイアンツであるというプライドを持って戦わなければならないと思い続けていた私にとって、自分とチームのあまりの不甲斐なさに、帰路についた車の中で「なぜ」を繰り返しながら涙が止まらなくなっていました。
翌年、原監督2度目の就任で4月は快進撃を続けていたのですが、徐々に後退し、交流戦では苦しい立場にまで追い詰められてしまったのです。そしてまたしても千葉でのロッテ戦。小関選手がイ・スンヨプ選手のホームランの際、三塁ベースを踏まなかったとされてしまったり(実際にはちゃんと踏んでいます)、サヨナラ負けを喫した後にチーム内に不穏な空気が流れてしまったりというちょっとした事件が起きてしまったのです。いったいチームをどうまとめるべきか、どんな方向性で戦っていくのかを選手同士で話し合い、原監督とも話し合いました。結局、06年シーズンは私もチームも立ち直れずにそのままの流れで終了。交流戦で負った傷は意外と深かったのかもしれません。いつもとは勝手が違う対戦は良くも悪くも想定外のことが起こりうるのです。
マイケルのスライダーに皆驚いた
- 2006年の交流戦で巨人を破りグータッチをする日本ハムマイケル中村と金子誠(06年5月23日)
そんな苦しいこともありましたが、なかなか対戦のないパ・リーグのエース級との勝負は非常に面白い。真っ直ぐの軌道の違いやスライダーの曲がりの違いを体感することは1つの楽しみです。当時日本ハムの抑えだったマイケル投手のスライダーは予想外に曲がっていたため、右バッターは皆「今日こそ腰を引かないぞ」と決心して打席に入っていたのですが、やはりスライダーに腰を引いてしまう自分自身や他の選手を見てみんな顔を見合わせては笑いあっていたものです。
相手を知らないがために力と力のぶつかり合いが数多く見られるのが交流戦の楽しみです。選手にとってもそれは同じ事。まだまだ続く「これぞプロ」の戦いから目を離してはいけません。
- 仁志敏久(にし・としひさ)
- 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。
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