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ソフトBの強さは負けない防御

ソフトバンク対中日 左越えにソロ本塁打を放った内川聖一はお立ち台で「やりました!」と叫ぶ(5月31日、福岡ヤフードーム)
ソフトバンク対中日 左越えにソロ本塁打を放った内川聖一はお立ち台で「やりました!」と叫ぶ(5月31日、福岡ヤフードーム)

 交流戦で快進撃を続けるソフトバンク。チームとしての完成度は12球団でもトップと言えるでしょう。とにかくピッチャーを中心としたディフェンスが素晴らしい。スポーツというのはどの分野でもディフェンスがしっかりしていなければ強いチームにはなりえません。それはなぜかというと点を与えなければ負けることはないからです。よく「攻撃は最大の防御」と言いますが、ノーガードの打ち合いはいつか必ず力尽きます。確かに10点取られても11点取れば勝つことは出来ますが、また次の試合で同じように点が取れるとは限りません。点を与えるのは非常に簡単ですが、それに比べて点を取るという事は比較にならないほど難しいのです。ならば出来る事は何か? とにかく失点を防ぐ努力をするのです。相手よりも1点多く取る努力と共に、またそれ以上に相手に1点をあたえない努力をしなければいけない。そういった緊張感のあるディフェンスをするチームこそがNO・1であり、それが今のソフトバンクだということです。現在、防御率、失点、失策数が12球団最少ということがそれを証明しています。

 一方、打線に関しては非常に機能的、躍動的です。得点、盗塁、打率が12球団トップ。カブレラ選手の不調は痛いところですが、その穴を小久保選手や松田選手が十分に埋め尽くし、着実な攻撃が出来ています。やはり内川選手の加入がかなり大きなウエイトを占めているでしょう。3番が確実に仕事をしてくれるため、1、2番の出塁、機動力が生かされる。本多選手も好調で、上位3人での得点能力はかなり高い。上位の打順で、しかも早いイニングに得点する事が余裕のある攻撃を生み出しているのだろうと思います。延いてはそれが試合展開の有利を生み、優れた投手力がその力を遺憾なく発揮しているようにも思えます。高い思想を持ってチーム作りに励んできた球団そのものの努力が反映しているとも言えるかもしれません。

吉見、チェンの復帰で中日が上昇

中日対日本ハム 2勝目を挙げ、ファンとタッチを交わすチェン・ウェイン(5月26日、ナゴヤドーム)
中日対日本ハム 2勝目を挙げ、ファンとタッチを交わすチェン・ウェイン(5月26日、ナゴヤドーム)

 現在セ・リーグで勢力を発揮しているのが中日。開幕から中軸の不調と投手陣のケガが重なり思うように戦うことが出来ませんでしたが、交流戦ではその悩みがずいぶん解消されてきました。安定した投手陣が今年もチームを引っ張っています。特に大きく勝ち越しているピッチャーはいないものの、適材適所で出てくるピッチャーの継投は非常に効果的。ケガで出遅れた吉見、チェン両投手が先発陣を引っ張る理想的な形が出来てきたのは上昇の大きな要因です。打線は苦しみながらも失点の少なさに助けられる形で何とか繋いで凌いでいます。結局相手より1点でも多く得点し、相手を1点でも少なく抑えれば勝てるわけですから、まさに中日はそれを実践しているということです。

 勝つということはそういうこと。強いチームは「勝つ」というよりも「負けない」ということが大事なのです。

仁志敏久(にし・としひさ)
仁志敏久(にし・としひさ)
 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。

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