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宮本がネクストで見つけた打撃

4月26日の巨人戦でナインと笑顔でハイタッチする、宮本慎也(手前)
4月26日の巨人戦でナインと笑顔でハイタッチする、宮本慎也(手前)

 ヤクルトの強さが目立った4月のセ・リーグ。若い投手陣がめきめきと頭角を現し、投手王国の礎を着々と作り上げています。打線も活発です。青木、田中、畠山、バレンティンと上位打線が好調。飛距離が落ちるといわれたボールを物ともせず、畠山、バレンティン両選手は既に6本のホームランを記録しています。この投手、野手共に若い力の中にあってひと際目立つ頑張りを見せているのが宮本慎也選手。今年41歳を迎える大ベテランは攻守共に衰えなど感じさせないはつらつぶり。昨年、一昨年と三塁手としてゴールデングラブを獲得し、名手宮本はやはりどこを守っても健在です。

 先日、久しぶりに球場で話をすることが出来ました。特にケガなどの心配もない様子で、バッティング好調の要因を聞いたところ、「開幕までは全くばらばらで、今年で辞めようかなと思ったくらい。でも開幕したころの試合中、ネクストサークルでタイミングを取りながらスイングしていたら、カチッとはまったのでもしかしたらいけるかも」と、思ったそうです。私も経験がありますが、調子が上がらない時は、構えからトップの位置に入るまでがどうもしっくり来ない。どこにバットを置いても気持ちが悪く、タイミングを取りだしてもトップの収まりが悪い。これは年を重ねれば重ねるほど出やすい症状で、「若い頃はこうやって打ってたのに」と思い返して同じ事をやってみても出来なくなるのです。理由としては加齢による関節などの可動域が狭まったことや筋肉の柔軟性が落ちたことなどが考えられますが、誰にでも訪れる事ですから上手く付き合う方法を考えなければなりません。宮本選手は柔軟性と力まない技術、そして高い志を持つ選手。小さなきっかけが好調の鍵だったと言いますが、出るべくして出ている結果だと思います。多くの選手から目標とされ、尊敬される存在ですからまだまだ元気な姿で魅了してほしいと願います。

小笠原も力加減を見つけるはず

4月29日の横浜戦で19打席ぶりに安打を放った小笠原道大
4月29日の横浜戦で19打席ぶりに安打を放った小笠原道大

 対照的に重いスタートとなってしまったのが大打者、小笠原道大選手。2000本まであとわずかとしながらの足踏みとなっています。彼は今年38才。確かに年齢的にまた変化が訪れる頃です。スイングを見ていても思ったようにバットが出てこない歯がゆさが感じられます。今年は開幕が延び、調整が間延びした形になり、目や肉体的な感覚が鈍りがちな要因がありました。ベテランであるが故にそういった事が敏感に感じられてしまいます。今年はファーストに移ったことも理由の1つかも知れません。ベテランが調子を落とすと、やれ年だ衰えだのと周りはささやき出しますが、恐らく終わってみれば「そんなこともあったな」という一時でしかないでしょう。試合を重ね、打席を重ねるうちに技術だけでなく、勝負勘も戻ってきます。バットを握る、振るということの力加減もそのうち見つかるはずです。そしてこんな時に最も必要なのは結果の善し悪しに関係なく「頼むぞ」というチームからの心意気。彼の存在なくしてジャイアンツ打線は成り立ちません。これまで積み上げた信頼はたった1カ月で崩せる物ではありません。チームの支柱フルスイング! まだまだこれからです。

仁志敏久(にし・としひさ)
仁志敏久(にし・としひさ)
 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。

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