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統一球がロースコア戦増やした

今シーズン使用されているコミッショナーのサイン入りプロ野球統一球
今シーズン使用されているコミッショナーのサイン入りプロ野球統一球

 今年は全般的にロースコアのゲームが多くなっています。これはボールが変わったことが全てでしょう。これまで使用するボールのメーカーは各チーム様々でした。メーカーによって反発力、表面の皮の感触、縫い目の高さ、幅などの違いがあり、選手にとってもそれは小さな戸惑いを感じるものでした。特に飛距離が違うということはピッチャーにとってもバッターにとっても死活問題です。ピッチャーにしてみれば飛ばない方がいいに決まっているし、野手にとっては飛んでもらわないと困るわけです。

 昔、あるチームでは球場が広くなった上に飛ばないボールを使用していたため打線が低迷し、同時にチームも低迷してしまい、選手が球団にボールメーカーの転換を懇願したということがありました。ボールを変えた事がチーム復活の大要因かどうかは分かりませんが、結果的にそのチームは安定した打力を誇るまでに至ったのです。結局そういった不公平や立場によっての不満はボールが違えば出てくるのが当然で、同じプロ野球なのですから統一されなければおかしいのです。

 これまでの戦況を見てみると、昨年までとは明らかに違っています。乱打戦が明らかに少ない。「○○試合連続二桁安打」「○○試合連続二桁得点」昨年まではよくこんなフレーズを目にしたと思います。これまではある程度打つことはどのチームでも期待出来てきたわけです。 従って、いかにピッチャーがその得点を与えないか。どのチームでもピッチャーの頑張り、投手力がキーだったのです。

いかに得点するかが今年のキー

リーグ首位の打率(5月9日現在)でチームを牽引する広島の広瀬純
リーグ首位の打率(5月9日現在)でチームを牽引する広島の広瀬純

 今年は逆です。大量点はあまり見込めませんが、ある程度少ない失点ということが期待出来ます。従って今年はいかに得点するかがキー。これまでの「いかに失点を抑えるか」から「いかに得点するか」に変わっています。順位表を見ても各チーム防御率は悪くなく大差ありませんが、打率のいいチームが上位に座っていることでそのことが明らかです。ボールの飛びで何とかならない分、調子の善し悪しもはっきり出てしまっているようです。私も今現役だったら四苦八苦していたかも知れません。ただ、WBCがあることやメジャーに行く選手のためには国際球により近いものを使用することが理想的です。

 投手戦が多くなれば一瞬のワンプレーが鍵を握り、これまでクローズアップされなかったような好守、好走がチームを助けるというケースが増えてくるでしょう。野手全体がボールに馴染むには少し時間がかかるでしょうから、当分は今までとは違う野球が求められるのではないでしょうか。ボールが変わってこれほど顕著に結果が出るとは思いませんでしたが、また1つ日本の野球がステップアップする証です。今年の秋にはどんなチームが祝杯をあげるのか、非常に楽しみです。

仁志敏久(にし・としひさ)
仁志敏久(にし・としひさ)
 1971年(昭46)10月4日生まれ。茨城県出身。常総学院高では1年夏に遊撃のレギュラーとして2学年上の島田直也投手とともに甲子園準優勝。夏の甲子園は3年連続出場。早大では4年春に早慶戦史上初のサヨナラ満塁弾を放つなど、当時リーグ最多タイ記録の1シーズン6本塁打。日本生命を経て、95年ドラフト2位で巨人に逆指名入団。1年目から活躍し96年新人王。99年6月25日広島戦でサイクル安打。99~02年二塁手でゴールデングラブ賞。07年小田嶋プラス金銭でのトレードで横浜移籍。09年退団。翌10年に米独立アトランティックリーグ・ランカスター入団。31試合出場で打率2割8厘、1本塁打、3打点。同年6月引退。先頭打者本塁打24本はプロ野球歴代7位。日本でのプロ通算は1587試合出場で打率2割6分8厘、1591安打、154本塁打、541打点。右投げ右打ち。171センチ、80キロ。

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