稀勢の里の綱とりは、持ち越し。9日目終了時で白鵬、日馬富士を1差リードする絶好の展開も、悲願は今場所もならなかった。

 優勝と綱とり。大きな壁を乗り越えるためには、何をすればいいのか。全勝V→12勝準Vで持ち越しとなった翌場所の87年秋に13勝準Vで横綱昇進を決めた芝田山親方(元大乃国)は「頑張ってもらいたい」と話した上で、課題を挙げた。

 「踏み込んでないし、上体が高い。上手の取り方がダメだ。立ち合いでバンと踏み込んで、上手の前まわしを取らないと。緊張で硬くなるのは、ある。でも、横綱になってもあんな相撲を取り続けるの? 気が気じゃないでしょ。自分の立ち合いで、前に攻めていくことを心掛けないと」

 同じ二所ノ関一門の先輩横綱として、稽古の量と質にも疑問を呈した。「場所前も見たけど、綱とり場所の稽古じゃない。普段と変わらない。もっとガンガンやらないと」。その思いは、八角理事長(元横綱北勝海)も同じ。「とにかく一生懸命稽古すること。努力してればチャンスはある。我慢して花開く相撲人生だと思う」。先人たちの「喝」を受け入れ、秋場所こそ「あっぱれ」の言葉をもらってほしい。【木村有三】