元K-1王者の魔裟斗(39)が20日に都内で、「戦友」と言う山本“KID”徳郁さんの死去を惜しんだ。

夫人の矢沢心とレギュラーパーソナリティーを務めるニッポン放送「笑顔のミナモト」で、24日放送の追悼コメント収録の際に取材に応じた。

最後に会ったのは1月で、仕事で一緒になった。その後にガンとは知ったが、突然の訃報には「マジかと。1月はいつも変わらず、病気の素振りもみせていなかった。3カ月後ぐらいに番組で指導しているのを見た。やせて、全然違って、どうしたのかと。試合のためかの減量かとも思ったが、やせ方が普通じゃなかった」と話した。

04年にKIDさんの挑戦表明から対戦が実現した。「KIDで一番思い出すのはあの試合だと思う。挑戦表明のセリフは鮮明に覚えている。K-1はまだ1戦。いやいや無理無理と思った」と振り返る。

試合では初回には左フックでダウンを喫し、2回に右ハイキックでダウンを奪い返しての3-0判定勝ちだった。通算64戦しているが「楽しかったのはあの試合だけ。全身からアドレナリンが出た」と最高の相手に挙げた。「特別な選手。過去にもいなかった、これからも出てこない。同じ時代に同じ舞台で生きてきた仲間。戦友」と評した。

試合を振り返り「総合格闘技だから、タックルとかもうちょっと違うと思った。戦うと真正面から正々堂々ときた。10キロ違うなんてあり得ないこと。その中で果敢に、臆することなく真正面から戦った」とたたえた。ダウンを喫したことには「遠い距離からの踏み込みがすごい。効いたと言うより、やられた」と今さらながらに脱帽した。

ジムにスパーリングに来たこともあった。「メディアでは強気のイメージ。見た目はああだけど、スポーツマンだった。練習もまじめで、リングに上がるまでは繊細だった」とも話した。対戦前に駒沢公園を走っていて、子どもと遊んでいる時に会った。「子供好きで優しいんだと、イメージが変わった。妻とも笑っている顔しか浮かばないと話した」という。

15年にも復帰して再戦し、判定勝ちで連勝した。KIDさんから「また10年後に」と呼び掛けられた。「子ども同士がいいんじゃないと言った。戦うより一杯行こうと約束したのに。拳を合わすよりも違う形で、昔話をしながらでも楽しく飲みたかった」と残念がった。

プライベートの付き合いはなかったが「一生会うことない。さびしい。いなくなっちゃった。なんと言っていいのか」としんみり。近年見ていた姿を振り返り、「責任を背負っていた。教えた選手がKIDのファイトスタイルを継承していくんだろうと。活躍し続けることで忘れられずにいられる。KIDイズムで活躍するのを願っているはず」とKID2世の活躍、継承を願った。