<K-1

 WORLD

 GP

 2008

 開幕戦>◇27日◇ソウル・オリンピック第1体育館

 【ソウル27日=山田大介】崔洪万(27=韓国)が格闘家として存在感を示した。脳腫瘍(しゅよう)除去手術から3カ月で迎えた復帰戦。3回終了後のタオル投入でバダ・ハリ(23=モロッコ)にTKO負けを喫したものの、2回には左ストレートでダウンを奪った。兵役免除されながら格闘界への復帰とあって、一時は韓国世論の厳しい目にもさらされたが、この日は大声援も受けた。継続参戦を希望し、12月には日本のリングに立つ可能性もでてきた。

 2回途中、約10カ月もの間眠っていた崔の拳が火を噴いた。ひたすら前に出続けるハリの顔面に、左ストレートがさく裂。打ち降ろすような鉄ついに、今もっとも勢いに乗るヘビー級王者ハリも思わすダウン。復活を強烈に印象づける一撃だった。その後も手数こそ少なかったが、圧倒的な体格を生かし、ハリにペースを握らせなかった。

 相手と戦う前に、いくつもの壁が立ちはだかっていた。兵役免除となった直後の今年6月、脳腫瘍除去手術を受けてK-1復帰を目指した。しかし、韓国世論は冷ややか。「兵役が務まらなかった人間が、格闘技なんてできるのか」。ネットなどでは、批判の書き込みが後を絶たなかった。

 また脳腫瘍を除去した人間が、頭を殴られる格闘技に復帰した例は世界的にもほとんどない。「戦えるのか」。自身も不安だった。だが会場のファンは温かかった。必死のファイトに約1万5000人の大観衆からは「崔洪万!」の大合唱が起こった。試合には負けたが「韓国国民の後押し」という、この上ない大きな武器を手に入れた。

 それだけに無念のタオル投入にも、表情はすがすがしかった。「試合放棄は自分で決めた。手術を受けて時間がたっていないし、みんなも心配していたので自分の体を最優先に考えた」。右ボディーは赤く腫れ、確かに限界だった。

 しかし格闘家・崔洪万は確かにリングに帰ってきた。「(12月の)決勝のリザーブファイトでもいいから、日本のファンにも復活をアピールしたい」。その目は次なる目標を見据えていた。