WBC世界フライ級王者の内藤大助(34=宮田)が余裕のパフォーマンスで、挑戦者陣営の挑発を一蹴した。23日の同級15位の山口真吾戦を前に16日、都内でスパーリングを公開。ボディー攻撃でKOを予告した相手陣営の渡嘉敷会長が視察する中、あえて左ボディーを受け、大げさに倒れた。「最大の弱点は陣営の不仲」という指摘には、ジムの宮田会長に移籍届を出すまねをして、周囲を笑わせた。相手の挑発を逆手に取って、王者の貫禄(かんろく)を見せた。

 まるでコントだった。2ラウンドの公開スパーリングの終了間際、内藤はパートナーに「ボディーを打て」と指示。左ボディーを受けるともんどり打って倒れ「ボディーはだめだ」とわざとらしく叫んだ。王者の「名演技」に、偵察に来た山口陣営の渡嘉敷会長も思わず苦笑いした。

 15日、渡嘉敷会長から、山口のボディー攻撃によるKOを予告された。それを逆手に取った形だったが、パフォーマンスは終わらなかった。内藤陣営の不仲が最大の弱点とまで公言されたことに、ジムの宮田会長に「会長、移籍します」と移籍届を渡すまねをして、笑いを誘った。

 渡嘉敷会長からは「タレントだね。パフォーマンスは世界王者」と皮肉たっぷりに返されたものの、自信があるからこその行動だった。この日までに150回以上のスパーリングを敢行するなど準備万端。練習後、あらためて相手陣営の挑発を問われると「パワーはオレの方が上。打ち合いは得意分野だし、来るなら来い」とおふざけから一転、殺気を漂わせた。

 4度目の防衛戦のテーマは「王者の強さ」を見せること。前戦7月の清水戦では「勝って当然」と言われながら中盤まで苦戦した。もともと、不利といわれる格上との試合の方が力を発揮するタイプ。今回も有利との声が高いが「その中で予想通りの試合をしたい」と語気を強めた。今の内藤には相手の陽動作戦を軽く受け流す余裕がある。【田口潤】