WBA世界ライト級王者小堀佑介(27=角海老宝石)が「無給防衛戦」に勝って夢のドル箱マッチを実現させる。来年1月3日のパウルス・モーゼス(30=ナミビア)との初防衛戦が、王座を奪った5月のアルファロ戦に続いてファイトマネーがほぼ「ゼロ」であることが分かった。ただし勝てば、大金を手にできる米ラスベガスでの強豪との対決が、実現へ動きだす可能性が高い。24日に練習を公開した小堀は、貧困生活に別れを告げるべく闘志をみなぎらせた。

 初防衛して「ノーギャラ王者」とおさらばだ。この日、練習を公開した小堀は、2ラウンドのスパーリングを消化。軽快な動きで、調整が順調であることを示した。挑戦者のモーゼスが「1回で倒してやる」と息巻いていると聞くと「じゃあ0・5ラウンドで倒します」と力強く宣言した。

 小堀のマネジャーを務める萩森健一氏によると、今回のファイトマネーは、世界初挑戦だった5月のアルファロ戦に続いてほぼゼロ。5月に続いて大物プロモーターのドン・キング氏に興行権を握られているためだ。前回は諸経費を含めると約1億円、今回も興行権の買い取りなどで30万ドル(約2700万円)ほど費用がかかる。萩森氏は「小堀選手に回せるファイトマネーは今回もない」と申し訳なさそうに話した。

 ライト級は世界で最も層が厚く人気のある階級。日本にチャンピオンを呼んで世界戦を開催するには費用がかかる。それでも小堀側は、当時王者のアルファロなら勝てると判断し、キング氏が高額なファイトマネーを要求してくることを承知で手を結んだ。しかも、4度の防衛戦の興行権を渡す要求ものんでいた。

 「世界王者になってしまえば、必ずチャンスは出てくると思った」と萩森氏。今回の指名試合に勝てば一気に変わる。キング氏と契約する3階級王者マルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)と、興行規模の大きい米ラスベガスで対戦する案も浮上する。ファイトマネーをもらって招待される形になり、経費もかからない。全米で知名度を得れば、大口スポンサーが舞い込む可能性もある。

 小堀は現在、スポンサーからの月12万円ほど収入のなかで家賃6万5000円のアパートに住み、田中栄民トレーナーの自宅で食事の世話になっている。「ラスベガスでビッグマッチをやりたい。勝利の確率は2分の1なんで」。ひと山当てるためにも、モーゼス戦は負けられない。【森本隆】