<プロボクシング:WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇9日(日本時間10日)◇米ニュージャージー州アトランティックシティー

 WBA世界スーパーバンタム級王者の下田昭文(26=帝拳)が逆転のKO負けを喫し、敵地での初防衛に失敗した。無敗挑戦者の同級1位リコ・ラモス(24=米国)に手数とスピードで圧倒して優位に試合を進めたが、中盤にまさかの失速。米国人ジャッジ3人に支持される展開だったが、7回に左フックを浴びてダウンを許し、2分46秒、KO負けした。日本人の世界王者として初めてとなる米国本土での防衛戦だったが、白星で飾ることはできなかった。下田はプロ戦績を23勝(10KO)3敗1分けとした。

 悪夢の逆転負けだった。6回までの採点で、下田は米国人ジャッジ3人のうち、6ポイント差1人、4ポイント差2人とリード。ところが7回に「最後は見えなかった」というラモスの左フックを浴びてダウンを喫した。大の字で倒れ、立ち上がろうとする意識とは裏腹に体が動かなかった。両足に力が入らないまま10カウントが数えられ、試合後は病院に直行して検査を受けたほどだった。

 序盤からアグレッシブに攻めた。「相手がもう少し前に出てくると思った」と下田は追いかける展開で攻めたが、クリーンヒットを打っていない不安が募った。「積極的に攻める」姿勢を支持されたが、本人はジャッジ内容が分からずに焦っていた。「ラモスは逃げ足が速く、よけるのがうまかった。敵地ということで前に出すぎたかもしれない。浮足立ってしまった。もう少し落ち着いて、できていたら…」と猛省した。

 帝拳ジムの本田会長は「控室では素晴らしい状態だったが、リングに上がって舞い上がった。今回は精神的なモロさが出た。こういう舞台で力を発揮するためにはタフじゃないといけない」と厳しく評価。帝拳プロの浜田代表は「はい上がるかどうかは本人の精神力が試される」と、再起を期待した。

 当然、下田も先だけを見ている。「自分の悪いところが出た。悔しい。これから。本当にこれからだと思います」。本場の厳しさを敗戦から学び、ひと回り大きくなろうとしていた。【上野幸治通信員】