<プロボクシング:WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦>◇17日(日本時間18日)◇メキシコ・カンクン

 WBC世界スーパーフェザー級王者・三浦隆司(29=帝拳)がダウンの応酬を制し、完全アウェーで初防衛に成功した。カンクンが地元の人気選手、同級1位セルヒオ・トンプソン(29=メキシコ)の挑戦を受け、2回と6回にダウンを奪取。逆に8回にダウンを許したが、破壊力ある左ストレートを軸に攻め続け、3-0の判定勝ちでV1防衛を飾った。13連勝&11連続KO中だった最強挑戦者を下した三浦には、11月にも凱旋(がいせん)マッチとなる国内V2戦が計画される。

 激戦を制した。2回、三浦が左アッパーでトンプソンの動きを止めた後、右フックでダウンを奪った。6回、左ストレートからの連打で2度目のダウンを奪取。消耗しながらもパンチ数の多いトンプソン。8回には接近戦から右フックを浴びてダウンを許したものの、10回以降は、接近戦で左ストレートを何度もさく裂させて主導権を握った。強打者同士の打ち合いを制して、判定勝ちをもぎ取った。

 激闘を物語るように、三浦は右目上をカットし、左目下も腫らした。病院に直行して検査を受けた三浦は「すごくうれしい」と初の海外マッチで初防衛に成功し、安堵(あんど)した。挑戦者の地元。闘牛場の円形の客席では鳴り物入りの応援が響く完全アウェーだった。これまで日本人の世界王者による海外防衛戦は3勝8敗と厳しく、元WBC世界スーパーフェザー級王者・渡辺二郎、元WBC世界スーパーバンタム級王者・西岡利晃の2人しか防衛を成功していない。難関を突破した形だが「内容に満足していない。相手を想定して準備してきたけれど、思い通りやれなかった」と気持ちを引き締めた。

 三浦を担当する葛西裕一トレーナーは09年5月、WBC世界スーパーバンタム級王者・西岡利晃のメキシコでのV2防衛成功を支えた。時差対策、食事管理を徹底。カンクンは自身の新婚旅行先でもあり、三浦をサポートするには十分な知識と経験を持っていた。三浦自身は6月の米ラスベガス調整で初めて本格派の外国人ボクサーとスパーリングし、独特のリズム感を吸収。葛西トレーナーは「首を振って的を絞らせない動きが自然に出てきた」。進化を遂げてリングに立っていた。

 リングサイドには、04年アテネ五輪金メダルで元WBA世界スーパーフェザー級暫定王者ユリオルキス・ガンボア(キューバ)の姿があった。三浦は「今の内容では」と謙虚だが、敵地での勝利で世界の注目を集めそうだ。また、1度負けたWBA世界同級王者・内山へのリベンジにも燃える。大ケガさえなければ、11月にも凱旋(がいせん)試合となる国内V2戦を計画。帝拳プロモーションの浜田剛史代表は「海外防衛は国内防衛の何戦分にも相当する経験」と高く評価。完全アウェーを乗り越え、三浦は一回り大きくなってメキシコから帰国する。<三浦隆司(みうら・たかし)アラカルト>

 ◆生まれ

 1984年(昭59)5月14日、秋田・山本郡三種町生まれ。

 ◆アマチュア

 中3でボクシングを始め、金足農3年の02年国体ライト級優勝。アマ戦績34勝(22KO)6敗。

 ◆王座

 03年に横浜光からプロデビューして、6回判定勝ち。09年に日本スーパーフェザー級王者の矢代義光を7回TKOで下して、3度目の挑戦にして同王座を獲得した。その後、4度の防衛に成功した。元日本フェザー級王者・三政直は叔父。

 ◆世界初挑戦

 11年1月、WBA世界スーパーフェザー級王者・内山高志に挑戦も8回終了後棄権でTKO負け。

 ◆移籍&世界王座

 11年7月、帝拳に移籍した。4戦勝利後、13年4月、WBC世界同級王者ディアスに9回TKO勝利。

 ◆家族

 彩美夫人と長男武元(たけはる)君。

 ◆サイズ&愛称

 身長170センチの左ファイター。愛称は左の強打に由来して「ボンバーレフト」。