<プロボクシング:WBC世界フライ級王座統一戦12回戦>◇27日◇東京・有明コロシアム

 WBC世界フライ級王者亀田興毅(23=亀田)が、プロ23戦目で初黒星を喫し、王座から陥落した。同王座を17度防衛した同級暫定王者ポンサクレック・ウォンジョンカム(32=タイ)にペースを握られ、5回にはバッティングで右まぶたを切るアクシデントにも見舞われ、最後まで劣勢をはね返せずに0-2の判定で敗れた。09年11月に内藤大助(宮田)から奪取した王座の初防衛に失敗。試合後は父史郎氏(44)が判定に猛抗議するなど混乱した。夢の3階級制覇へ、仕切り直しが迫られそうだ。

 採点は接近していた。だが数字以上に、内容は完敗だった。開始から、興毅にいつものスピードがなかった。序盤からポンサクレックのプレッシャーにじりじりと後退し、的確な左ストレートを浴びた。4回終了時の採点で、1人のジャッジがドロー、残り2人がポンサクレックを支持。流れを変えようと前に出た5回に、偶然のバッティングで右まぶたをカットするアクシデントにも見舞われた。

 連打で巻き返そうにも、パンチにいつもの切れがなかった。7回に左ストレートを決めて両手を上げたが、その後は百戦錬磨のポンサクレックに巧みに逃げ切られた。プロ入り後初の「敗北」と「王座陥落」。厳しい現実にも興毅は表情を変えず、観客に深々と頭を下げてリングを降りた。試合後はボディーガードに抱きかかえられるように、サングラス姿で無言で会場を後にした。

 因縁に終止符を打つはずだった。プロデビュー前の02年から計3回、スパーリングをした。持ち前のけんかファイトで、当時の王者ポンサクレックを「上の方を尊ぶ気持ちがない」と憤らせた。王座統一戦決定後は「ポンサクレックはずっと追いかけてきた。勝つまでは王者やとおれは思ってない。因縁やね。決着つける」と決意を秘めていた。

 09年11月の内藤戦後、イベントに引っ張りだこになった。計画していたハワイ旅行をやめ、練習と並行してイベントをこなしたが、体が悲鳴を上げた。フィリピン合宿から帰国した1月23日、39度の高熱が出た。「頭がぐらんぐらんした」。だが翌日は早朝から映画撮影をこなし、病院で治療してから試写会出席のため英国に飛んだ。「アンチも多いけど、応援してくれる人たちもいる。仕事も約束やから守らなアカン。それでいて、しっかり調整して勝つのがプロ」。その責任感が、結果的には裏目に出たのかもしれない。

 試合後、控室では父史郎氏が判定に不満をぶちまけ、混乱した。それでも敗北という結果は覆らない。五十嵐会長も「結果は出ているので負けは負けです。でも…」と唇をかんだ。試合前、興毅は「ボクシングは1回でも負けたらアカン。危機感はある」と語っていた。だが、まだ23歳。夢の3階級制覇まで、できることはまだまだ残っているはずだ。【浜本卓也】