[ 2014年6月19日7時9分

 紙面から ]グラウンドに入り、ボールを手に笑顔を見せる大久保(撮影・狩俣裕三)

 【イトゥ(ブラジル)17日(日本時間18日)】日本代表のFW大久保嘉人(32=川崎F)が、弟分の復活のために一肌脱いだ。1次リーグ初戦のコートジボワール戦で、精彩を欠いたFW香川真司(25)を風呂に誘って「全然ダメやったな」と愛のムチ。あまりに直接的な表現に香川にも笑顔が戻った。「過ぎた時間は帰ってこない。次に切り替えろ!」。運命を懸けた19日(同20日)ギリシャとの第2戦へ、大久保流の愛が日本を救う。

 勝つために何が必要か。悩みに悩んだ大久保が出した結論は、香川を誘って風呂に入ることだった。日本代表が拠点にするイトゥ市内の施設には、ジェットバスがある。コートジボワール戦の敗戦を引きずり、元気のない香川を風呂に誘った。一緒に付いてきた長友と3人。真っ裸で湯船につかった。昔は手の付けられないほど?

 やんちゃ坊主で一匹おおかみだった男は、いきなり愛のムチを打った。

 大久保

 真司、この前はマジで、全然ダメやったな。ほんまにダメやったけど、まあ、落ち込むなよ!

 香川

 えっ…。

 大久保

 お前、とにかく笑えよ。もう、しょうがない。過ぎた時間は帰ってこないから。切り替えろ。短期決戦は、いつまでも引きずっていたらダメや。

 あえて直接的に“ダメだし”した。その上で、もう過去は振り返らずに次のギリシャ戦に集中することを訴えた。最初は驚いていた香川だったが、兄貴分の優しさを感じ、笑顔が戻った。裏表のない大久保の人柄だからこそ、香川は素直にうなずいた。

 17日の練習後、大久保はC大阪時代の06年途中に半年間だけ同僚だった後輩を思いやるように、このエピソードを明かした。

 「真司と話しました。すげー、落ち込んどったけど、もう前向きです。アイツがやらんと、日本はダメでしょ。気を使われると(逆に)きつい。自分が悪い時でも、そう言って笑い飛ばしてくれた方が助かるからね」

 過去の体験談から、大久保は言動に移した。ギリシャに勝てば、1次リーグ突破の可能性が広がる。勝利のためには、本田とともに日本を引っ張ってきた香川の復調が重要だ。代表から遠ざかっていた1年前。香川に会うと「待っていますよ」と言葉を掛けられた。あの時の感謝の思いがあるから、苦しんでいる弟分を助けたかった。

 「ギリシャはデカいけど(身長の低い)俺にとっては、誰でもデカく見える。小さい方としてはラッキー。俊敏性はこっちの方があるから、付いてこられないからね。そこを突きたい」

 10年W杯南アフリカ大会は、決勝トーナメント初戦でパラグアイにPK戦で敗れた。悔しさを晴らすために、大舞台に戻ってきた。「常にゴールは狙っている。相手に脅威を与えたい」。苦境に陥った日本は、ピッチ内外で大久保がよみがえらせる。【益子浩一】