がんで余命いくばくもない父(柄本明)をめぐる田舎の家族がテーマではあるが、重さや暗さを感じさせない、心温まるコメディーに仕上がっている。

 売れないバンドで夢を追うモヒカン頭の永吉(松田龍平)が、妊娠した恋人由佳(前田敦子)を連れ、7年ぶりに故郷広島の島へと結婚のあいさつへ戻る。そんな折、父に末期がんが発覚。おめでたと不幸が同時にやってきて、大騒ぎになる家族(と前田)のため、モヒカンが奮闘する。

 タイトルからして、モヒカン男の変人ぶりに期待したが、意外にも真人間だった。父のむちゃすぎるわがままを聞いたり、教師である父の教え子を車で送ったりと、いいヤツすぎる…。人は見かけで判断しちゃいけない、という裏テーマか? むしろ、男言葉に料理下手と、育ちの悪さ全開な前田の型破りな演技に破壊力を感じた。

 無気力に見えて実は熱い気持ちを持つ子、素直になれないが子を思う親の心理を、「横道世之介」の沖田修一監督が随所でうまく表現している。特に海岸で父子水入らずで話すシーンは涙なしには見られなかった。【森本隆】

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