ファンキー加藤が映画初主演、ヒロイン役に平愛梨。正反対のことで世間を騒がせている2人が名を連ねるとは、偶然って怖い。

 シャッター通りになった田舎の商店街に活気を取り戻そうと、春雄(加藤)は覆面レスラーだった父(武藤敬司)から譲り受けたマスクをかぶり、覆面歌手サブイボマスクとして孤軍奮闘する。元恋人の雪(平)を巻き込み、町おこしは成功したかに見えたが、街には怪事件が続発。春雄はぬれぎぬを着せられる。

 加藤の演技は悪くない。悲しみ、怒りなど感情を出す場面は、初主演と思えないほど様になっている。平は、言葉は汚いが、春雄の思いを受け止めるシングルマザーを好演した。終盤、春雄の思いを代弁する場面では、文字通りサブイボ(鳥肌)が立った。

 ところが、作品を見たのが騒動発覚当日。割り切るべきなのは分かっていても、やはり騒動の影が頭をちらつく。見せ場なはずのミカン箱ステージで歌うシーンも、そんな理由で「加藤節」の歌詞が頭に入っていかない。ひねりなしの直球な展開も、加藤の「本来の」イメージだから成立するものだった。演技では奮闘しているだけに、もったいないなぁ…。【森本隆】

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