《先週の語録「こんな大河もたまにはいいよねと、大目に見てもらえたら幸い」(脚本家宮藤官九郎氏)


 2019年のNHK大河ドラマ脚本を担当することになった宮藤官九郎氏(46)のコメントです。戦国時代か幕末が定番の大河ですが、描く時代はなんと近代。2020東京五輪の前年とあって、「日本とオリンピックの関わり」を題材に、1912年のストックホルム大会から64年の東京五輪までの約50年間が舞台となります。見たことない大河に、今からわくわくが止まりません。

 いつの頃からか、大河は折り目正しい“歴史のお勉強ドラマ”の風格になっていますが、市川森一、山田太一、ジェームス三木らレジェンド脚本家らが手掛けた70~80年代黄金期は、歴史の舞台を借りた豪華青春ドラマという、画面からはみ出るような自由さがあったんですよね。

 菅原文太主演「獅子の時代」(80年)の主人公は架空の人物でした。架空の下級武士が幕末の英雄たちとがんがん渡り合い、音楽は宇崎竜童のロックギター。時代考証に閉じこめられない山田太一氏のダイナミックな筆運びで、疾走感あふれる幕末を生き生きと見せてくれました。「あまちゃん」で朝ドラに風穴を開けたクドカンのこと、脚本家の世界観が前面に出る大河を再び期待できそうです。

 登場するのは、五輪に関わったスポーツマンや関係者たち。NHKによると、架空の主人公や、主人公のリレーの可能性もあるそうです。制作統括ら「あまちゃん」の主要制作陣が再集結して臨みます。宮藤氏は「戦国時代にも幕末にもあまり思い入れがないから、自分には大河は無理と思っていました。『できる題材を探しましょう』という優しい言葉をいただき、だんだんその気になり考えたのが『東京』と『オリンピックの物語です」。けた違いの制作費と豪華キャストで、自由にクドカンワールドを描いてほしいです。

 といっても、来年の「おんな城主 直虎」、再来年の「西郷(せご)どん」の次の話。待ち遠しすぎます。


◆梅田恵子(うめだ・けいこ) 東京都生まれ。89年入社。主に芸能面、社会面を担当。11年より、日々の取材と取材歴であれこれ言う芸能コラム「梅ちゃんねる」をウェブ上で展開。毎クールごとの「勝手にドラマ評」も6年目。偏食すぎて自炊、超方向オンチ。