05年に38歳の若さで白血病のため亡くなった本田美奈子.さんが病床で遺したアカペラ曲に、新たに演奏を付けたCDアルバム「AGAIN」が発表されることが7日、分かった。日本コロムビアから11月4日に発売される。

 本田さんは05年1月に都内の病院に入院した。半年後、同じ病院に作詞家岩谷時子さんが大腿(だいたい)骨などの骨折で入院してきた。以前から岩谷さんを母のように慕ってきた本田さんは、無菌室から出られなかったが、歩けず病室から出られない岩谷さんとボイスレコーダー(音声記録装置)を介して交流。岩谷さんを励まそうと病室で合計32曲を歌った。

 その中の23曲がこれまで、NHKの追悼番組で紹介されたり、追悼アルバムに収録されるなどして、ファンに届けられたが、いずれもアカペラだった。今回のアルバムには、歌声が引き立つピアノの演奏音を加えた11曲が収録される。未発表となっている9曲の中からは「Impressions」が収録される。96年シングル「Shining eyes」のカップリング曲で「ルー、ルールルー」と声を楽器のように使うスキャットが印象的。ファンの間で隠れた名曲といわれている。

 関係者によると、ボイスレコーダーには同曲歌唱後のメッセージものこされていた。「言い訳させてください。もっと大きい声出せれば大丈夫なんですけど。小さい声だとピッチが上がったり下がったり難しい曲なんですけど、また再度チャレンジしたいと思います」という言葉が録音されていた。入院から約10カ月後、05年11月6日に永眠したため、約束を果たすことはできなかった。死去から10年、「Impressions」は新たな命を得て世に送り出される。【松本久】