土屋アンナ(31)の稽古無断欠席で舞台公演が中止になったとして、甲斐智陽プロデューサー(64)が損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は25日、請求を棄却した。原克也裁判長は、台本の権利関係をめぐる問題によって土屋との信頼関係が失われており、稽古の不参加には正当な理由があるとした。土屋は「長かった」と安心した表情を見せたが、甲斐氏は控訴する方針を示した。

 13年7月の舞台中止決定後の提訴から2年5カ月。法廷対決は土屋側の「全面勝訴」で終わった。甲斐氏は開廷15分前に入廷したが、土屋側は代理人だけで本人が欠席する中、原裁判長は判決を言い渡した。

 土屋が稽古に参加せず、主演舞台「誓い~奇跡のシンガー」が中止に追い込まれたとして、甲斐氏が土屋と実母が経営する事務所に約3000万円の損害賠償を求めた訴訟について「台本の内容が原作と異なっていたが、甲斐氏は原作者に事前に見せていなかった」と指摘。そうした事情を知った土屋は甲斐氏への信頼を失っており、「稽古不参加には正当な理由がある。不法行為に該当しない」として請求を棄却した。

 さらに、仮に土屋が予定通りに稽古に参加していたとしても、著作権の問題が生じて、適法に公演を実施するのは困難だったと結論づけた。

 一方で地裁は、甲斐氏が作詞と作曲を手掛け、動画投稿サイトYouTubeで公開した曲「ANNA」に対して土屋が「中傷する歌を公開され、名誉を傷つけられた」として1100万円の損害賠償を求めた訴訟についても、土屋の社会的評価を低下させるものとして、甲斐氏に33万円の賠償を命じた。原裁判長は「訴訟が社会的耳目を集める中、甲斐氏が自ら演奏し歌唱したものが公開され、一般視聴者は『ANNA』とは土屋さんを指すもの理解する」と指摘。「土屋と無関係」とする甲斐氏の主張を退けた。

 甲斐氏は判決後、ぶぜんとした表情で「話にならない。控訴する」と声を荒らげた。さらに「7、8割で勝っても控訴するつもりだったが、100対0で負けると思わなかった」と悔しがり、「言い分を聞いてくれず、裁判長を訴えたいくらい。このままでは終わらない。もう、金の問題じゃない。最高裁までいきます」と息巻いていた。