ウグイスのさえずりなど動物の声帯模写で知られる4代目江戸家猫八(えどや・ねこはち)さん(本名・岡田八郎=おかだ・はちろう)が3月21日午後6時22分、川崎市内の病院で進行胃がんで死去した。66歳だった。葬儀・告別式は同25日に近親者で行った。5月下旬にお別れの会を開く予定。喪主は妻岡田シゲ子(しげこ)さん。

 マラソンなどで日ごろから体を鍛えていた猫八さんだったが、今年に入って体調に異変を感じた。1月末に胃カメラ検査で進行胃がんが判明。深刻な状態と知った猫八さんは、身の回りの整理や仕事のやりくりを自分で行った。葬儀を密葬にすることも自分で決めて伝えていた。シゲ子さんは「休演する際は主催者に自分で電話していました。きちょうめんな人でした」。

 2月16日に行ったテレビ朝日系「徹子の部屋」の収録が最後の仕事となった。体調は良くなかったが、長男江戸家小猫(38)と出演した。猫八さんは3月8日の放送を自宅で見て「いい仕事をしたなあ」と喜んだという。翌9日、痛みが増して緊急入院し、21日に家族に見守られながら息を引き取った。

 闘病中、家族1人1人にさまざまなことを言い残した。「猫八の名前を頼む。そのタイミングは任せる」と小猫にも伝えた。小猫は10代から20代にかけ、尿にたんぱくが大量に出るネフローゼ症候群を患った。その回復を待って芸の修業を再開した。小猫によると、猫八さんにとって自分の活躍は何よりうれしかったようで「人間としても芸人としても、しっかり学んでいて安心している」と言ってくれたという。

 亡くなった日、猫八さんは東京・国立演芸場「国立名人会」に出演予定だったが小猫が代演した。当日朝に病院に寄った小猫に、頼んだぞというように手を振った。江戸家の芸が継承されていくのを見届け、猫八さんは旅立った。

 ◆江戸家猫八(えどや・ねこはち)1949年(昭24)11月30日、東京都生まれ。動物の声帯模写の第一人者だった3代目猫八の長男。祖父2代目猫八も声帯模写で知られ、68年に高校卒業後、父に弟子入り。「江戸家小猫」の芸名で活躍し、俳優としてドラマ「マー姉ちゃん」などにも出演。父の死去後、09年に4代目猫八を襲名。