故永六輔さんが晩年まで親交のあった故桂米朝さんの筆頭弟子で、10代のころからかわいがられていた上方落語家桂ざこば(68)は11日、死去の知らせを受け「若い人、若い才能を応援してくれる人やった」としのんだ。

 今年4月の東京での落語会で、永さんの姿を見かけず「体調がお悪いのかなと思っていた」と語ったものの「びっくりです、残念…」と言葉を続けた。

 永さんは昨年3月に亡くなった米朝さんと若い頃から親交があり、晩年まで趣味の俳句仲間としても交流があった。ざこばは米朝さんの筆頭弟子で、10代の頃から師匠に同行。永さんと面識があり「ようかわいがってもろた。演者側だけやなく、若い演出家やら脚本家らのために、部屋を借りて(勉強する)たまり場を造ったりしていた」と振り返った。

 ざこばが20歳のころ、永さんが新しい芸能活動のひとつとして「ストリート落語をやったらどうや」と提案。ざこばは東京・新宿の路上で、ゆかたを着て落語を演じたことがあった。もちろん、警察へは無許可ライブ。警官が駆けつけ、ざこばを叱責(しっせき)したといい「永さんが助けてくれると思うたら、ずっと電信柱の陰に隠れてはった」そうだ。

 無事に解放された後、ざこばが「永さん、助けてくれると思ったのに」と言うと、永さんは「お前が連行されたら、出て行って助けてやろうと思って見ていた」と話したという。

 若者の自主性を育てようとした永さんの懐の深さ、そして余裕。ざこばは「今でも忘れられない思い出」と話していた。