双子の演歌歌手こまどり姉妹(長内栄子・敏子=73)が蜷川幸雄氏(76)演出の舞台「2012年・蒼白の少年少女たちによる『ハムレット』」(さいたま市・さいたま芸術劇場インサイドシアター、来年2月20~29日)に特別出演することが2日、分かった。平均年齢25歳の演劇集団「さいたまネクスト・シアター」公演で、波乱に富んだ半生を送るこまどり姉妹をリスペクトする蜷川氏の40年越しの思いが実現した。

 こまどり姉妹は伝説の演歌歌手だった。北海道の炭鉱町を転々とし、家賃が払えず夜逃げし、小学校も2年しか通えなかった。日銭を稼ぐため門付けするなど苦労を重ねた。13歳で上京。浅草で三味線を片手に流しをしていてスカウトされ、59年「浅草姉妹」でデビュー。61年、NHK「紅白歌合戦」に初出場し7年連続で出場したが、66年の公演中に熱狂的ファンに敏子が刺され重傷を負い、その後も両親の死、敏子のがん、税理士の横領で税金の滞納問題など不幸が続き、借金もあって73年に一時芸能界から離れ、栄子も未婚の母となった。その後復帰を果たし、今も現役として派手な振り袖姿で歌っている。

 そんなこまどり姉妹に、同時代を生きた蜷川氏は大きな関心を寄せ、常々語っていた。「こまどり姉妹が舞台を通ったら、僕たちの舞台は凍り付くだろう。ハムレットが『to

 be

 or

 not

 to

 be』と言った時、こまどり姉妹が登場する芝居をつくったらどうなるか。ベンベンベンと三味線を弾きながら振り袖姿で横切ったら、僕たちの舞台はぶっ飛んでしまうんじゃないか」。姉妹に代表される民衆のまなざしに自分たちの舞台は耐えられるのかと考えていた。

 73年に舞台「泣かないのか?泣かないのか?一九七三のために?」を演出した時から姉妹のことが頭にあったという。その熱い思いが40年近い年月を経て実現する。シェークスピアの名作舞台だけに、蜷川氏のラブコールにも「こういうところに出ても大丈夫なんですか」と心配した姉妹も、蜷川氏と対面し「楽しみです」と本番を待ちかねている。どういう形で登場するかはけいこに入ってから決まるが、蜷川氏とこまどり姉妹の異色のコラボ舞台は注目を集めそうだ。【林尚之】

 ◆こまどり姉妹

 1938年(昭13)2月16日、北海道釧路市生まれ。「三味線姉妹」「ソーラン渡り鳥」「三味線渡り鳥」がヒットし、東京・有楽町の日劇や、浅草国際劇場を超満員に。映画「こまどり姉妹

 おけさ渡り鳥」「こまどりのりんごっ子姉妹」に主演。09年にドキュメンタリー映画「こまどり姉妹がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」が公開。