<連載「気になリスト」(85)>

 日本のハート(心)を歌う黒人歌手が、来月1日にCDメジャーデビューする。米国人のクリス・ハート(28)。7日には、東京・青海のダイバーシティ東京プラザで無料ライブを開催し、森山直太朗の「さくら」などのJ-POPのカバー曲を歌った。

 休日の買い物客たちは、風ぼうからは想像できない丁寧な日本語の甘くソウルフルな歌声に驚き、思わず足を止めた。すぐに約1000人が集った。中には「あっ、テレビで見たことある~」という声も飛んだ。ハートは「外国人に日本でデビューできるチャンスがあるなんて、本当に感謝です」とあいさつした。

 新人だが、すでに存在は知られ始めている。昨年3月9日放送の外国人が邦楽を歌う日本テレビ系「のどじまん

 ザ!ワールド」に初出演。SMAPの「夜空ノムコウ」に挑戦し、優勝した回の平均視聴率は15・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークした。それを偶然、見ていた西野カナやJUJUを育てたジェフ・ミヤハラ音楽プロデューサー(36)に「僕が手掛けてデビューさせる!」と決意させた。

 昨年10月7日放送の同番組(同16・2%)にも、視聴者と番組関係者のラブコールで再出演。歌った木山裕策の楽曲「home」(08年)が、翌日からレコチョクなどの音楽配信チャートで軒並み1位になる現象も起こした。

 邦楽好きが講じて、24歳で日本に移住。化粧品会社の自動販売機の技術工として全国を飛び回りながら、ユーチューブにJ-POPを歌う姿もアップし続けた。その最中、歌手の福永瞳さん(27)と知り合い、結婚。同番組からは出演オファーを受けるなど、ネット上の口コミから、夢への道がつながった。

 キャッチフレーズは、3つのハートで、「“ハート”フルな歌声で、日本の心(ハート)を、愛(ハート)を込めて届けます」と誓う。「米国なら黒人はラップ、白人はロックと、専門分野に分かれちゃってます。でも、J-POPは世界中の音楽を混ぜ合わせて、いろんな楽曲を作り出してます。この奥深さを、世界中に広めたいんです」。夢を語る瞳は、子供のようにキラキラしている。【瀬津真也】

 ◆クリス・ハート

 1984年8月25日、米カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。ジャズ・ベーシストの父とサルサ歌手の母の音楽一家に育つ。中学校に入り、12歳で日本語科目を受講し、日本文化に傾倒。Jロックのコピーバンドを結成。小田和正や安全地帯などのファンに。13歳で茨城にホームステイ。化粧品会社社員として就労ビザを取得し、24歳にして日本に移住。175センチ、88キロ。血液型O。(4月8日付

 紙面から)