ロック歌手中村耕一(63)が、新バンドの「中村耕一

 Timeless

 Band」を結成し、7日にアルバム「Song

 Bird」をリリースし、日刊スポーツの取材に応じた。2010年5月に覚せい剤取締法違反(所持)で有罪判決を受けてから4年半。率いていたバンド、JAY

 WALKを脱退し、2年前に復帰後の試練を乗り越え、家族やバンドメンバーとはぐくんでいる幸せについて語った。

 やはりバンドの演奏が楽しい。覚せい剤取締法違反で懲役2年、執行猶予4年の判決を受け、約30年率いたJAY

 WALKを脱退して約4年。昨年12月に新アルバムを引っさげ、東名阪のツアーで歌った中村は、久々の爽快感に包まれていた。「2年前の復帰時にサポートしてくれた(ロックミュージシャン)三宅伸治ちゃんに『バンドで曲を作ろう』と誘ってもらって、CDができました」。

 かつてはメロウ(熟した)な甘いメロディーが代名詞だったが、JAY

 WALKでの晩年期は、そのイメージが嫌だったという。

 「周囲やファンの気持ちを考えて、自分の枠から出られずに十数年もがいてました。今は、ずっとやりたかったシンプルなロックができて、歌うことが楽しい。インディーズ制作なので、CDを作って売ることがいかに大変だったかを実感してます。昔は、いかにみんなに助けられていたか、今ごろ分かりました」

 ただ、復帰ロードも順風ではなかった。妻のタレント矢野きよ実(52)と息子やカウンセリングの助けで、薬物依存症は克服できたという。しかし、1年半前の6月に妻の肺腺がんが発覚。緊急手術と入院治療となった。「この病気はストレスが主原因。僕の事件のせいですよね…。今度は僕が何とか支えたかったんです」。泊まり込みで看病し、妻の仕事のキャンセル交渉にも出向いた。幸い妻は一命を取り留め、仕事復帰もした。

 償いの思いが深い中村は今、月~金曜午前7時から生放送の東海ラジオ「矢野きよ実の朝は矢野流」のために、同4時に起き、妻を車で送迎している。事件後から始めた家事も続けており、「今は僕が『無理をしない方が』って言うと、(矢野から)逆ギレされるぐらい元気になってますから」。ささやかな日常が戻ったからこそ、思う存分に歌が歌える。

 試練を乗り越え絆がより深まった家族、歌声を慕ってくれるバンド仲間、少年期にビートルズに衝撃を受けた時のように新鮮に感じる骨太のロックサウンド…。「60を過ぎてから、普通の幸せと仕事での刺激と感動をもらえるようになりました」。イメージを覆す中村のシャウトが、充実を物語っている。【瀬津真也】