久しぶりに、「国会の風物詩」ともいえる光景を目にした。6月12日、衆院厚生労働委員会が行われた委員会室前で、野党議員による「人間バリケード」が行われた。

 「風物詩」と書いて、ちょっと考えてしまった。見ていていつも、ため息が漏れてしまう光景だからだ。

 このときは、民主党などが猛反対する、労働者派遣法改正案の強行採決の可能性があるとして、委員会を開く権限を持つ委員長の入室を阻止するのが目的だった。衛視にガードされた委員長と民主党議員が、「入れろ」「入れるな」でもみ合いの修羅場。結局、この日の強行採決はなかったが、委員長が頸椎(けいつい)捻挫を負い、携帯電話が一時なくなる騒動に発展。「場外戦」にスポットが当たる形になった。

 重要法案での野党のさまざまな「バリケード」は、過去にも数多く行われてきた。支持者向けのパフォーマンス、という人もいる(その姿を見て、支持者が喜ぶかどうか疑問だが)。

 「伝説的」といわれるのは2003年7月、イラク復興支援特措法案を参院の委員会で強行採決した際、当時自民党議員だったプロレス出身の大仁田厚氏と、自由党議員だった森ゆうこ氏が、委員長席近くで、乱闘に近いつかみ合いになった。森氏はスカート姿。別の意味で緊張感が漂った。

 2008年5月、暫定税率復活をめぐる税制改正法を採決した衆院本会議では、衆院議長の議場入りを阻止しようと、100人近い民主党議員が議長室前の廊下を封鎖した。この際、参加した女性議員に「スカート禁止令」が出ていた。つかみ合いの中、初当選の記念に仕立てたという一張羅の背広が、びりびりに裂けてしまった議員もいた。

 バリケードを張られる側も、知恵を絞る。野党のすきを突き、通常の出入り口を変えて入室&脱出に成功するのは、いい方だ。野党議員が自室前に陣取って外に出られず、窓から外に出て、べランダをつたって別の部屋に移って脱出したり、部屋の外にあるトイレに行けなくなることを心配し「携帯トイレ」を持ち込んだ委員長もいた。

 今後の国会では、安倍政権の命運を握る安全保障関連法案の衆院採決のタイミングが、いつかはやってくる。「風物詩」史上に残る激しい激突が、たくさんのため息の前で、展開されることになるのだろう。