2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長代行を務める遠藤利明前五輪相(67)が17日、都内で日刊スポーツの取材に応じ、主会場となる新国立競技場の大会後の利用について、屋根付き競技場への改修を検討していることを明かした。屋根だけでなく側面も覆うことで音楽イベントなどの収益性を高める考え。寄付による資金集めを拡大させる構想も明かし、聖火台や競技場内のタイル、木製のイスなどに企業名や個人名を入れ、寄付を募る方法を挙げた。

  ◆  ◆  ◆

 ポスト2020年を見据えた新国立の形が見えてきた。五輪相に就任する前から新国立競技場の後利用策を練ってきた遠藤氏は、五輪後の民間活用について「屋根がないと難しい」と語り、競技場内を室内空間とする「ドーム型」等も検討していることを明かした。

 15年7月、ザハ案が白紙撤回になり同12月、建築家・隈研吾氏や大成建設、梓設計によるデザインが新たに選ばれた。総工費が約2520億円にまで膨れたザハ案では屋根は開閉式のものだった。その後、総工費を約1490億円にまで圧縮する過程で、屋根はスタンド上部のみとなった。

 しかし、五輪開催後は維持費が毎年約24億円かかることが見込まれる。ランニングコストを抑制するため、民間事業者に運営権を委譲するコンセッション方式を採用することが有力だ。新たにドーム型にすることは、運営権を持つ民間の判断にも委ねられるが、安定した運営を維持するには、スポーツイベントだけでは高い収益性が見込めない。音楽イベントや企業展示会などの開催も不可欠だ。

 遠藤氏によると、夏冬の寒暖に対応するにはドーム型が理想だが、費用対効果から屋根を覆うだけのプランとの比較も必要だという。ドーム型にすれば、密閉されることからフィールドに天然芝を敷くことは難しくなる。ただ、最近は女子サッカーやラグビー世界大会が人工芝で行われており「技術力が高まっている」と、五輪後に人工芝とする案も検討課題に挙げた。

 資金集めの具体策としてインターネットで資金調達するクラウドファンディングなどの寄付システムの構築も目指す。「ネーミングライツの奉加帳方式」と銘打ち、対価として新国立にある物品に企業名や個人名を記入する案。遠藤氏は「聖火台を企業の寄付でとの案もある。聖火台に直接名前は付けられないので、玄関に名前を貼るなど、いろんな策がある」と語った。

 隈氏のデザインが木を基調としているため2階席の7800席を木製イスとし、被災3県の木材を使いたい意向。それにも寄付を募り「例えば1脚10万円で、新国立完成後の一般公開前に記念撮影ができるような特典があっても良い」とし、「みんなで造った国立にしたい」と思いを語った。【三須一紀】