石原慎太郎元東京都知事(84)が3日、都内で築地市場の豊洲新市場移転問題について会見を開いた。

 石原氏は、豊洲新市場移転を決断、裁可した理由について「私も専門家じゃない。専門部局の環境局、港湾局などに一任するしかなかった。報告を待って、最終的に各局をまたぎ、上申した結論に対し、市場長に『大丈夫か』と聞いたら『今の技術を持って大丈夫です』と言うから裁可した。専門委員会もあり、調査した。だから裁可した」と説明した。「私は技術的知見はないが、政治判断をして移転を発表した。土壌汚染を改善できなければ、無理に移転すべきではないとも認識しており、09年にメディアに発言している。盛土は私に記憶はない」とも語った。

 その上で「とにかく、議会も承認した。公明党と自民党も賛成し、議会の総意として決まった。責任は、裁可をした私1人の責任というより、行政全体に責任があり、検証するのがこの問題の本質を明らかにする1番大事なポイント」と自分だけの責任ではないことを強調した。

 東京ガスから購入した土地に、土壌汚染の問題があったことは認識していたが、譲渡後に新たに汚染が発覚した場合、東京ガスの瑕疵(かし)担保責任を免除する取り決めがあったことについては「都の質問で初めて知った。(重要だと)思う。私はそれまでの、交渉のプロセスの中で、市場の案件として論じられると聞いていない」と、知らなかったことを強調した。

 東京ガスとの土地売買の交渉は、副知事だった福永正通氏、浜渦武生氏ら部下に任せており「(部下に)一任していた。私はそこまで報告を受けていない。そんな小さなことに、かまけていられないし、部下を信用しないとどうしようもない。合意書に押印した記憶はない。私自身が、東京ガスとの契約書にサインした記憶はない。少なくとも、その疑惑はございません。都の職員が、その際に私のはんこを使ったのではないか」と断言した。

 集まった報道陣からは、東京ガスの瑕疵(かし)担保責任を免除する取り決めがあったことを認識していなかったことについて、会見に臨む前に、その件を浜渦氏に確認していなかったかを中心に質問が相次いだ。それに対し、石原氏は「聞いていない」「交渉の当事者に聞かないと分からない。時間がなかった」などと繰り返し、明確な回答をしなかった。

 石原氏は報道陣からの追及が続く中で「私は逃げるわけじゃないが、交渉の当事者に任せていた。ネゴシエーションの現場に立ち会ったことはない。今から聞こうと思ったら聞ける」と、浜渦氏への確認は可能だと居直りとも取れる発言をした。それを受けて、会見の最後に司会から「石原さんの責任において、調べて報告する義務があるんじゃないか?」と指摘された。すると「分かりました。できる限り努力いたします。ただ、もっと大事なことは、中ぶらりんになっている豊洲を、早く稼働させること」と、ややいら立ちながら約束して失笑を買った。

 自身の豊洲問題への疑念を晴らすための会見ながら、小池百合子現知事(64)が豊洲市場移転を遅らせて、混乱を招いたと繰り返し批判した。会見の冒頭で「裁可した最高責任者には責任がある。でも築地市場の人を生殺しにして、ランニングコストを無駄にした、混迷の責任は現都知事の小池さんにある」と主張。会見の締めでも「日本の最高権威科学者が、安全だと言っていながら、何で使わないんですか? しかも半額で外国に売り飛ばすなんて、論外な話。それをせず、詰まらないお金をダラダラ垂れ流すのは、今の政治、当事者の責任」と、小池知事への批判を口にした。

 退場時に、合意書へのはんこを、都の職員が押したのではないか? と答えたことに対し、「知事以外に、知事のはんこを押せる人は何人いたんですか? おかしいんじゃないか?」と質問が飛んだが「預かっています…所長」などと答えて退場した。【村上幸将】