名波浩監督(42)率いるJ2磐田が、劇的に3季ぶりのJ1復帰を決めた。最終節で大分に勝利し、J1自動昇格の2位に入った。1点リードで迎えた後半45分に同点弾を許すも、ロスタイムにMF小林祐希(23)が執念の決勝ゴールを奪った。

 誰も勝利を諦めていなかった。後半45分に失点して1-1。だが、小林は冷静だった。自陣のゴールからボールをかき出し、センターサークルへ置いたDF宮崎智彦(29)の姿を見て、「諦めてない人がいる。俺も」と気合を入れ直した。すばやいキックオフから左サイドへ展開。ドリブル突破した上田からのクロスを、小林は胸トラップで落として左足を振り抜いた。GKの手をかすめたが、勝利への執念が上回った。

 ゴールネットが揺れたことを確認し、走りだした。「23年間で初めてあんなにはしゃいだ。奇跡とか持ってるとか言われたくない。練習通りのゴールです」。

 今季から、チーム内の幹事を率先して務めてきた。選手全員での食事会の際には、店を決めて予約。さらに選手の好き嫌いを把握し、事前にメニューを変えてもらうほど徹底した。また磐田を応援する飲食店や企業へ1人であいさつに出向いてユニホームをプレゼントするなど「少しでも、磐田をよくしてもらえたら」と行動してきた。

 試合後には、チームメートとともに涙を流した。「これからが、やっとスタート。J1でやるための通過点。光に満ちあふれている未来が見える」。まだ23歳の小林が、飛躍のチャンスをつかんだ。