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  インタビュー<日曜日のヒロイン>
 過去のインタビューは、日刊スポーツ紙面(東京本社発行分)でもご覧になれます。
 ご希望の方は→紙面バックナンバー申し込み
 なお、WEB上では、紙面より1週間遅れでの公開となります。
第483回    綾瀬はるか  
2005.09.25付紙面より

綾瀬はるか
写真=セーラー服姿で来社した、デビュー当時の山口百恵さんを撮影したことがある。そのとき、持っていたかばんからカラカラと音がするので何だろうと思ったら「学校の帰りで弁当箱です」と、教えられた。百恵さんの役にチャレンジする綾瀬はるかに「これからもっと輝いていくんだな…」と、2人の姿をダブらせた
(撮影・橘信男)

笑顔、涙。忘れかけていた清純派が、ここにいます

 いまどき珍しい育ち方というべきなのだろう。厳しかった父親の教えに素直に従い「純な女の子」を内からにじみ出るように自然に演じている。綾瀬はるか(20)。インタビュー中は終始おおらかに笑い、ときに涙ぐむ。やや時代がかった言い方になるが、吉永小百合、山口百恵と受け継がれた数少ない本物の「清楚(せいそ)さ」が、この人にはあるような気がする。


厳しい父を尊敬

 大方の父親はこの年代の娘からうとましく思われるものだ。「尊敬してます」。あっさりと言われて、最初は冗談だと思った。が、父親を語ると自然な笑顔がこぼれる。「同世代のお友達には『お父さんとはしゃべらない』っていう子もいるけど『かわいそうだよー』って説得しちゃう」。

 父と娘のきずなをテーマにした75年のヒットドラマ「赤い運命」のリメークに主演した(TBS、10月4日から3夜連続放送)。山口百恵が演じたヒロイン・直子に取り組んだ。17歳で初めて会った父親は殺人犯。戦時中の忌まわしい記憶から世の中を恨み、さらなる復しゅうを企てる父親を、娘のいちずな愛情で救うまでの物語だ。父親のため、刃物に身を投げ出すこともためらわない。

 「直子は女神のように強い女性。私はとてもかなわないけど、両親を思う気持ちという点では同じ。お父さんのためなら、私も同じことができます」。

 実家は広島で野菜農家を営んでいる。父親は、優しさと厳しさを併せ持つ人だ。

 「家族旅行をしたり、クリスマスには長靴のお菓子を買ってきてくれる優しい父ですが、小学校までは本当に厳しかった。口答えをすると、バチーンとビンタが飛ぶ。私が中学生になってからは、すっかりおおらかになってますけど(笑い)。最近は友達関係みたいな親子も多いけど、ウチは典型的な父と娘です」。

 デジカメの購入計画から仕事の悩みまで、決断に迷う時は父親に電話する。

 「求められる演技ができなくて、大泣きして電話すると『命まで取られるわけじゃない』って。そうだよな、ってフッと思えて、頑張ろうってパワーが出るんです。離れて暮らしているせいか『このまま先立たれたらどうしよう』なんて…。両親が死んじゃう夢まで見て、ものすごく泣いて起きたり。同居している兄には『ひどい娘だ』って、あきれられてます(笑い)。こういうドラマをやると、余計に考えちゃいましたね」。


悩める高校時代

綾瀬はるか

 透けるように肌が白く、水栽培の花のように繊細な印象だ。

 「とんでもない。納豆食べる時は、家の横の畑からネギとってきて『はいよ!』って感じの子でした。川で遊んだり、男の子と自転車で遊んでドブに落ちてねんざしたり。足には小さい傷がたくさんあります」。

 15歳の時に、友達に誘われてホリプロスカウトキャラバン広島予選に応募した。「かわいい子たちを見学に行くノリ」だったが、4次審査を突破。東京での決勝大会まで進み、応募総数4万221人の中で審査員特別賞を受賞した。芸能界入りに両親は大反対。受賞した瞬間、会場にいた母親はショックで泣きだしてしまった。

 「まさか特別賞もらってデビューなんて、誰も考えてなかった。普通は半年で上京するのに、ウチは1年半も家族会議してました(笑い)」。

 とりあえず3年、というスタンスで高2の夏に上京した。広島の高校時代は、宝物のような思い出になっている。

 「朝は先生が校門にバーッと立ってて、遅刻すると1週間のトイレ掃除。携帯が見つかったら1週間没収。厳しい校則生活がいかにも学生、って感じで大好きだった。合唱祭に向けてクラス全員で『優勝するぞ』って猛練習したり。すっごい熱い高校でした」。

 上京前日、合唱祭に出られない綾瀬のために、クラスの男子生徒たちが歌で送りだしてくれた。

 「歌詞の『君のために』って部分を私の名前に替えてハモってくれて…。もう号泣でした」。

 上京したら、広島弁コンプレックスで無口になってしまった。グラビア時代は同世代アイドルと一緒のイベントに出ることが多かった。取材はほとんど集団で受けた。

 「誰かがしゃべってくれるからいいや、なんて人任せで。広島にいた時は、有名なグラビア雑誌も知らなかった。ビキニの撮影で『私、エロいことさせられてる〜』って恥ずかしくって(笑い)。あとは事務所に言われたオーディション受けて、ドラマにちょっと出たり。自分が何をやりたいのか分からない“とりあえず3年”は、すごく長かった」。


セカチュー転機

綾瀬はるか

 昨年、転機が訪れた。ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」で白血病に倒れるヒロイン亜紀を演じた。

 「小説に感動して『どうしても私が亜紀をやりたい』って初めて本気で思えた。オーディションでは、台本を持つ手がガタガタ震えて、ページがカサカサいう音でセリフが聞こえない。いままでにはなかった緊張でした。穴があったら入りたいと思うほど恥ずかしかったけど、熱意だけは伝わったみたい」。

 本気で演じたい役と向き合い、初めて「怖い」と感じた。今も悩みのタネである“マイナス思考の心配性”の一面が出てきたという。

 「寝られないんですよ。厳しいプロデューサーさんの顔が頭に浮かんだり、夢で監督の『カット』の声で目が覚めたり」。

 日常生活でも、役と同化していなければという責任感から、家ではテレビも見てはいけないと思いつめた。

 「1人でも泣いてなきゃ、みたいな、ワケ分かんない状態(笑い)。ジムですごい高熱のまま泣いてトレーニングしてる私を見て、先生が『オンとオフを切り替えないと集中力が鈍って出せる力も出ない』って。納得でした。今も大切な撮影の前日は寝られないですね。こういうレベルを早く抜け出したいんですけど。もっと自分に自信と余裕を持てるようになれば、変われるのかな」。

 今は仕事や演技に欲が出てきたという。

 「人の気持ちに何かを訴える影響力という意味で、この仕事のすごさを知りました」。

 今年8月、終戦60周年の節目に広島、長崎への原爆投下を検証するドキュメンタリー番組に、筑紫哲也氏と出演した。広島出身の彼女は「おばあちゃんのお姉さん」を原爆で亡くしている。番組内で初めて祖母から原爆にまつわる話を聞いた。「何も知らなかった自分が恥ずかしい」と大粒の涙を落とす姿に、広島の人たちから「あなたが伝えてくれて良かった」と多くの声が寄せられた。

 「京都は歴史の街とか、北海道はグルメとか楽しそうなのに、広島というと『修学旅行で原爆ドームに行きました』みたいな。そういうイメージを不満に思っていた自分がすごくバカ、最低って思った。おばあちゃんがどんな気持ちで私に話してくれたのか。私が生まれた街で何が起こったのか。もっと重く受け止めるべきだったと…」。

 涙声になった。

 「赤い運命」も、反戦のテーマを含んだ内容だ。満蒙開拓団として旧満州(中国東北部)に渡り、日本軍に裏切られた男の無念が物語の発端になっている。

 「今も原爆手帳を持っている人がいるように、戦争で傷ついている人は今もいる。世界にはまだ核兵器も戦争もあるし。ちっちゃいケンカは、いつか大きなケンカになる。お互いを思いやる気持ちだと思うんですけど、そんな簡単にいかないし…。難しいです」。

 山口百恵を知らない世代だ。

 「ずっとトップを走ってきて、結婚でスパッと引退していい家庭を築いて。カッコいい」。結婚観を聞くと「20歳ですもん。まだ分からないですよ」。好きなタイプは「芯(しん)の強さに裏付けられた優しさを持った誠実な人」。ここでも心配性が顔を出す。

 「だって、結婚って相手の家族もあるし、責任重大でしょう? 自分の名字が変わるってことは、自分の家のお墓に入れないってことで、結構悲しいじゃないですか。また考えすぎ?(笑い)。もう、最近はこういう性格だからできる演技もあるんだと、無理やりプラス思考に持っていってます」。


「天性の女優」

綾瀬はるか

 「赤い運命」で共演した船越英一郎(45) 綾瀬はるかの魅力は「清洌(せいれつ)さ」でしょう。私が演じた島崎は血のつながらない娘に実の親子以上の情愛を抱くのですが、はるかのおかげでいとも簡単にその感情を持つことができました。はるかの中には、女優として大きく開花するために必要な母性とうれいも潜んでいるのです。天性の女優と言っても過言ではないでしょう。波乱に満ちた女性の大河ロマンを演じられるような、スケールの大きな女優に育ってほしいと願っています。


 ◆綾瀬(あやせ)はるか 1985年(昭和60年)3月24日、広島市生まれ。00年、第25回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞受賞。02年、NHK「風の盆から」でドラマデビュー。ドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」のヒロインで一躍人気者に。ほかに「雨鱒の川」「戦国自衛隊1549」など映画出演多数。趣味はカラオケ。165センチ。血液型B。


(取材・梅田恵子)

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