ミスを反省させるな
<ラグビー得点王のキャンピージ氏に聞く>
豪州ラグビーの得点王で、第2回W杯ではMVPに選ばれたデビッド・キャンピージ氏が今年も日本フットボール協会らの招きで来日し、ジュニア指導を実地にコーチした。
昨年は、(むろん成人の)日本代表の試合を見て、「なんだこれは。ラグビーになっていない。何をやろうとしているのかわからない。変化はしているが、だからといって進歩したとはいえない。体格差を埋めるだけのスピードも戦術もない」と、酷評した。
競技によっては、批判に対して協会が神経をとがらせるようになり、「批判されない日本代表」を最終目標に考え始めているところもあるようだ。ラグビーの「辛口男」キャンピージさんの日本評は、前例がないほど手厳しく、容赦がなかった。「練習でいくら頑張っても、ラグビーは練習のためにあるのではなく、ゲーム(試合)で成り立っている。試合で自分の特長を出し切れないのは、努力不足か、考え方が間違っているかのどちらかだ。日本の場合は、努力不足とは言い切れない」。
努力の方向性が、間違っているという指摘だった。苦しくてもあと半歩、あと1歩と前進していくのは、まさに男の人生の象徴だが、「そういう局面の努力で自分をごまかさず、パスの精度や、自分の位置の捉え方を、もっと研究してほしい」とも。
サッカーともアメフトとも違うのだろうが、「基本技の正確さが欠けていては、いくら見せかけの戦術を展開しても、何にもならない。弱い相手だと分からないが、少しでも歯応えのある相手の前には、弱点がすぐに露呈する」という言葉は、ある意味で普遍的だ。
そのキャンピージ氏が今月初め、関東学院大学で日本の子供たちを相手に指導、コーチング・クリニックをしてくれた。
ラグビーのボールを使ってバスケットボールや「ハンケチ落とし」など、あらゆる「ゲーム」を子供たちにやらせて、ラグビーではなく、ラグビー・ボールを使った遊びに熱中させた。
「こんな面白いことはなかった」と、子供たちも大喜びだった。
日本のジュニア指導は、協会だけでなく多くのボランティアによって、かなり進化したものになっており、画一化されたマニュアルや、「教えすぎ」あるいは「熱心過ぎるパパ、ママの視線」からは、サッカーよりも先に脱却し始めている(あるいはまだサッカーにはるか追いついていないのか)。
キャンピージ氏はまず楽しさを教え、子供たちが自発的に「ラグビーを遊びたがる」ような環境を創ってやることが大事と、熱心に説いていたが、ジュニア指導に携わるスタッフたちには、「それは分かっている」ことでもある。
しかし、現実には「分かっていても」つい「こうしなさい」「それをやってはだめ」と、指導してしてしまうのが人間だ。
キャンピージ氏は、「ミスをしたとき、日本の子供にはそこで動きを止めて、反省するようなところがある。仲間に謝ったり、後悔している。豪州では、ミスはラグビーに含まれた要素であり、ミスは罪ではなくプレーの要素だと、誰もが割り切り、いちいち反省しない。反省する代わりに、動きを続けながら、次の展開をどうしたらよいか、工夫しようとする。これが実践で役立つ練習だ。ミスをするたびにコーチや両親の顔色を気にする子がまだまだ日本には多い。社会の価値観や教育のセオリーがそうさせるのだろう。ジュニア指導のスタッフが苦労が多いだろうが、頑張ってほしい」と話していた。
確かに、ミスを気にする度合いが日本では高い。どのスポーツでもそうだ。そこでプレーが止まる。これは、裏を返せば「上手にやると褒められる」という、スポーツにも現れる国民性と無関係ではないだろう。
褒められることがモチベーションの大きな要因であることは、初期の段階は仕方がない。しかしそのまま成長させず、自分自身でラグビーを、スポーツを、人生を楽しむ動機を「発見させる努力」が、環境の側に必要だということだ。
褒められる喜びのために努力する。だからミスすると反省する、あるいはその素振りをする。この傾向は、あまり好ましくない。
キャンピージ氏の目はさすがに鋭かった。
もっとも、これは子供たちの話。大人たちは、なぜミスが出たのか、精度を上げるにはどうしたらよいかについて、「汗」以外の局面でもっと努力せよ。
日本は努力している。だから、最近は国際試合でも「勝つ」体験を重ね始めている。
「それでよし。その調子だ」と、キャンピージ氏が微笑する日は、そう遠くないだろう。
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後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、58歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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