陸上男子400メートルリレーで日本が歴史的な銀メダルを獲得した。山県亮太(24)-飯塚翔太(25)-桐生祥秀(20)-ケンブリッジ飛鳥(23)で国別で世界歴代3位となるアジア新記録の37秒60を出した。

 1走山県が、いつもと同じロケットスタートを決めた。英国、カナダに続く3番手で飛び出し、曲走路で加速。2走飯塚へのバトンをぎりぎりで渡し、うまく勢いを持続させた。100メートル準決勝で記録した号砲への反応速度は神業クラスの0秒109。その集中力を発揮した。

 あとは祈った。ゴールを見届け「よっしゃ!」と叫び、仲間に駆け寄った。ボルトらジャマイカ選手に声をかけられ、握手も求められた。「ジャマイカ選手は僕のスターですし、一緒に走って競って握手ができるというのは、こんなにうれしいことはない」。喜びをかみしめた。

 味わった悔しさが原動力となった。昨年4月、テキサスリレー(米国)で同組の桐生が追い風参考記録ながら9秒87を記録。その背中を見て「おれは何をやっているんだろう」。直後には日本の父浩一さんに「ごめんなさい」とメッセージを送った。負けず嫌いの息子の言葉は、父に「陸上をやめるのではないか」と心配させるほどだった。持病の腰痛を克服し、苦境を乗り越えての快走だった。

 100メートル準決勝は10秒05と、2大会連続で五輪日本最速と自己記録を更新。絶好調をキープしたまま、銀メダルへの流れを作って、歴史に刻んだ。「夢は実現できるんだと証明できた」と胸を張った。【鎌田直秀】