<W杯アジア最終予選:オーストラリア1-1日本>◇B組◇11日◇メルボルン

 本田の1トップはいいアイデアだった。先制の場面がまさにそうだったが、前線でしっかりボールキープして、追い越す選手を生かせるFWはなかなかいない。今後へ向け、いいオプションを得たのではないか。

 ただその後のベンチワークには疑問を感じた。戦況に対する反応が、あまりにも遅かった。アウェーなので、守備的な戦いになるのは仕方がない。序盤から前線の選手は、とても守備を頑張っていた。相手の攻撃の勢いをそぐ「フィルター」になり、最終ラインの負担を大きく軽減していた。

 だから前半はほとんどピンチがなかった。ただ、頑張っていた分、原口らの運動量は落ちてきた。それなのにハリルホジッチ監督は、後半35分を過ぎるまで、交代のカードを切らなかった。運動量の低下で「フィルター」が利かなくなり、後ろの選手の負担がどんどん増えていった。これでは一方的に攻め込まれる展開になるのも当然だ。

 Jリーグで好調なFW斎藤ら、適切な交代カードを切って前線の運動量を補えば、攻撃はもちろん守備もうまく回っただろう。結局のところ「本田1トップ」などの新機軸も、けが人が出たことで偶然生まれただけではないのか。そう思わされてしまう。(日刊スポーツ評論家)