偉大な先輩に刺激を受けました。今月9日、担当する清水の取材で静岡市内の練習場にいると、2010年まで清水に在籍していた元日本代表MF伊東輝悦(41)がクラブハウスを訪れました。今季限りでJ3長野を退団した伊東は、私の高校時代の先輩であり、あこがれの存在。来季の去就は決まっていませんが、「まだプレーはしたい」と現役続行に意欲を示していました。

 2014年に長野に入団し、2年間での出場はわずか11試合。それでも、普段の練習で若手とプレーしても「衰えは感じていない。欲を言えばもっと試合に出たかった」といいます。冬場は雪で思うような練習ができない環境にも「いい経験だった。楽しい時間を過ごさせてもらった」と前向きでした。

 J1通算517試合出場。J2では25試合、J3でも11試合出場。Jリーグの全カテゴリーを経験した選手は数少ないと思います。チームが変わっても、サッカーに対する熱い思いは変わらない。常に「ベストを尽くしてやろうと思っている」姿勢があったからこそ、ここまで現役を続けてこれたのだと感じました。

 今後は長野を拠点に自主トレを続けて、オファーを待つといいます。多くの人はまだ現役を続けるのかと思うかもしれませんが、「そういう選手がいてもいいんじゃないかな。プレーできる場所がなければ辞めればいいしね」と、顔をくしゃくしゃにして笑っていました。その表情はまるで「ただただ、好きだからやっている」サッカー小僧のようでした。

 清水のレジェンドでかつて“鉄人”と呼ばれた男。偉大な先輩を取材し、純粋にまだプレーが見てみたいと思いました。納得のいくまで思う存分走り続けてほしい。そして、引退後は生まれ育った清水に戻り、これまでの経験をクラブ再建のために伝えてほしい。そう、強く思いました。【神谷亮磨】


 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大静岡翔洋(旧東海大一)でプレー。08年入社。11、12年はJ2磐田を取材し、今季から清水担当。