思わずこぼれ落ちそうな涙を必死でこらえた。J2長崎FW永井龍(りょう=25)は、11日のアウェーC大阪戦後、慣れ親しんだキンチョウスタジアムでの「永井」コールに胸を打たれた。
今季、C大阪から長崎に完全移籍した。ここまでリーグ30試合に出場し、14得点。絶対的エースへと成長しつつある。そんな永井はC大阪の下部組織で育った。中学生でジュニアユースに入団。各世代別代表に選出され、10年にトップ昇格を果たした。しかし、プロの世界は甘くなかった。
プロ1年目はリーグ終盤に切り札として起用され、7試合に出場。2年目、3年目も数試合に出場するがゴールは奪えなかった。チームにはMF香川やMF清武、MF乾、FW柿谷…と尊敬する先輩がたくさんいた。いつもその背中を追い掛けていた。
「セレッソではスタープレーヤーがいて、どう食らいついていくか、いつも考えていた」
12年途中から約1年半、オーストラリアへ期限付き移籍で武者修行に出たり、昨季も当時J2だった大分で約半年経験を積んだ。C大阪に帰ってきても、FWとしてなかなか思うような結果が出ず、苦しみ、悩んだ。そして、今季から育ててくれたクラブを完全に離れ、心機一転、長崎で成長することを決意した。
話を戻して、C大阪戦前日の10日。永井は珍しく緊張していた。初めて敵として、C大阪のホームへ足を踏み入れる。「どんな感じなんやろう…。想像できひん」。いつもの自分とは少し違う。頭の中では複雑な思いが交錯していた。
「セレッソでは(試合に)出られなかった悔しい思いもした。全てがいい思い出ではなかった。でも、育ってきたクラブとしては誇りに思う。『見返そう』と『恩返し』の間ぐらい。いかに多くのプレーで『セレッソにおって欲しかった』と思ってもらえるか。成長した姿を見せつけてやろう、と思っていた」
強い気持ちで臨んだ試合は0-2で敗れた。永井はシュートを1本も打たせてもらえなかった。「悔しかった。もっとうまくならないと」。試合終了後、ふがいなさも感じながら、ロッカールームへ戻った。すると、C大阪のゴール裏から「永井」コールと、チャント(応援歌)が聞こえてきた。鳴りやまない歓声。さらに「いつまでも桜の誇り永井龍 つかみ獲れ得点王」の横断幕。こみ上げてくる感情を抑えるのに必死だった。
「危なかった。でもここで泣いちゃいけない。これで終わりじゃないので。ゴール裏のファンが僕のチャントを歌ってくれて…。長崎のためだけに頑張ると思っていたけど、僕の背中にはセレッソもあるんだと感じました」
温かい気持ちに触れ、より一層責任感が高まった。
「セレッソでは食らいついていくのが必死だった。そういう気持ちも大切だけど、長崎では自分が何かしないといけない。得点も取らないといけないし(ボールを)キープもしないといけない。ヘディングも競らないといけない。そういう気持ちの部分は成長できた。得点王、取らないといけない」
現在、J2で得点ランク3位。首位を走る札幌FW都倉、清水FW鄭とは3点差だ(第31節終了時)。目標は明確。覚悟は決まった。大阪の夜空に照らされた永井の姿は、いつになく大きく見えた。【小杉舞】
◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同年11月からサッカー担当。今季の担当はG大阪など関西圏クラブ。甲子園球場での売り子時代に培った体力は自信あり。



