全国高校サッカー選手権の準決勝が今日7日、東京・国立競技場で行われる。初めて4強入りした尚志(福島)は、91年度以来20年ぶりの優勝を狙う四日市中央工(三重)と対戦。仲村浩二監督(39)は、敵将の樋口士郎監督(52)から学んだ「褒めて伸ばす」指導で県勢初の決勝進出を目指す。

 ピッチの外で眺めていた人と同じ舞台に立つ。5年前。尚志の仲村監督は、四日市中央工の練習試合を見学するため茨城にいた。「ベンチ裏に立って、ずっと樋口さんの動きを見てました」。20年前に四日市中央工が優勝した時、城雄士監督をコーチ(ともに当時)として支えた樋口監督。その指導を吸収し、新進校に持ち帰る-。尚志が選手権に初出場したころだった。

 きっかけは恩師の言葉だった。仲村監督は習志野(千葉)出身。当時、指揮していた本田裕一郎監督(現流通経大柏)から、自身が監督になった後「樋口君は選手を怒らず指導する」と教えてもらった。実際に見て「褒めて伸ばすとは、このこと。型にはめず『ええやん』と個性を尊重していた。以来、指導に生かしています」と影響を受けた。

 その成果が、初めて4強入りしたチームづくりに表れた。選手に千葉出身は多いが「なかなか市船(市船橋)や流経(流通経大柏)に行くような子は来ない」(仲村監督)。その中で原石を探し「長所を褒めて伸ばす」ことが近道だった。

 例えば、MF金森。中学時代に市船橋の練習会に参加したが、入学に至らず福島に越境入学した。そこで仲村監督の指導を受け「控えメンバーの時から具体的なアドバイスをくれたし、尚志に来て持ち味の守備が伸びた」と感謝している。

 新進校が勝つため、いいものは何でも吸収する。初の国立を前に、選手にかけた言葉もそうだった。「意識しすぎるな。国立は特別な場所じゃない…って、布さんが言ってたよ(笑い)」。市船橋で選手権優勝4度の布啓一郎氏の言葉を借り、未踏の聖地にイレブンを送り出した。【木下淳】

 ◆仲村監督と四日市中央工

 高校時代に3度の対戦がある。現役時は習志野のMF。2年時の89年度に選手権2回戦で初対戦し、0-2で敗れた。2度目の対戦は3年夏の高校総体。再び2回戦で当たり、0-0(PK6-7)で競り負けた。最後は3年冬の選手権1回戦。5-1で完勝し、仲村監督は「三度目の正直。僕の4アシストでリベンジしました」。当時の相手には、FW小倉やDF中西が2年生で所属していた。