【ホーチミン(ベトナム)2日=益子浩一】日本代表FW本田圭佑(28=ACミラン)が「W杯優勝」をあえて封印する。この日早朝にミラノから現地入り。0泊の弾丸日程で日本人学校を電撃訪問し、サッカー教室まで開いた。16日から始まる18年W杯ロシア大会アジア2次予選を目前に控え「目標は変えない。ただ、W杯までは(優勝と)聞かないでくれ」と、不言実行で世界一を目指す。

 やはり規格外の男だった。本田はこの日早朝にミラノから、飛行機を乗り継いでホーチミン入り。5月30日に2年目のセリエA全日程を終えたばかりだが、休む間も惜しんで、昼すぎに日本人学校を電撃訪問した。小1から中3まで約400人の前で30分間、熱弁を振るうと、夕方からは現地のスタジアムでサッカー教室を開催。飛行機の時間が迫る直前まで、子供たちと汗を流した。

 16日のシンガポール戦から、18年W杯アジア2次予選が始まる。これまで「W杯優勝」を公言してきた本田は、サッカー教室終了後に取材に応じた。

 「(W杯の)目標は変えません。そこに向かっていきます。ただ、W杯まではもう(優勝と)聞かないでください」

 有言実行から不言実行へ。1年前のW杯ブラジル大会は1次リーグ敗退。ACミランでも今季29戦6得点と満足な結果は残せなかった。本田自身が壁に直面しているのだろう。まだU-22(22歳以下)日本代表で、W杯を夢見ていた07年11月17日に、現地でU-22ベトナム代表と対戦。昨年末のタイに続き、この地を選んだのは原点回帰として「もう1度ここに来たかった」のだという。次回W杯へ続く長い道の始まりを前に、踏んでおきたい場所がベトナムだった。

 日本人学校では、女子児童に「もし夢がかなわなかったら、どうしたらいいですか?」と尋ねられた。本田の答えは明確だった。

 「自分自身もまだ夢をかなえていない。でも時間を無駄にしてはいけない。今しかないんです。大人になってから頑張るのではない。今、頑張るんです!」

 0泊の弾丸日程で、ベトナムでの滞在は約17時間だった。気温35度、湿度75%。高温多湿の現地で、熱すぎるほどの「夢授業」で自らを奮い立たせた。休む暇はなく、近日中に帰国して日本代表に合流する予定。ハリルホジッチ監督とともに、18年W杯という自身3度目の夢に向かって、歩み始める。

 ◆ホーチミン市 ベトナム南部に位置する人口約740万人の同国最大の商業都市。旧名はサイゴン。日本企業も多く進出する東南アジア有数の経済都市でもあり、気候は高温多雨で1年を通じて温暖。日本へのフライトは約6時間、時差は2時間。