オーストリア1部ザルツブルクFW南野拓実(20)が、北朝鮮に借りを返して五輪への1歩を踏み出す。16年リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23(23歳以下)アジア選手権(来年1月、カタール)の1次リーグ初戦で日本は北朝鮮と対戦。昨秋のU-19選手権で南野がPKを外し敗れた相手で、悔しさを晴らす格好の組み合わせとなった。U-22代表の海外組として欧州で2季目を迎えた男が決意を語った。

 南野の「Road to RIO」はリベンジから始まる。最終予選の組み合わせを聞き、思わず口角が上がった。「面白いっすね」。北朝鮮と同組、しかも初戦。因縁がフラッシュバックする。昨秋、U-19代表の主将としてアジア選手権の準々決勝で対戦。PK戦までもつれた末に南野が外して敗れ、4大会ぶりのU-20W杯出場を逃した。

 南野 抽選結果を聞いた瞬間「きついな~」と思いましたけど、今は「やったろうか」って気持ちの方が強い。あれだけ悔しかった試合はないし、絶対に借りを返したいと思ってます。

 当時、頭が真っ白になりながら「この悔しさは忘れられない。次のステップに生かしていかないと」と言葉を絞り出した。より世界への思いが強くなり、今年1月にC大阪からザルツブルクへ移籍。いきなり国内2冠を経験した。3月の五輪1次予選は1得点2アシスト。ただ、満足していない。先週、オーストリアでU-22代表の手倉森監督と日本協会の霜田技術委員長と会食した際も「試合に出続けることが最終予選に呼ぶ条件」と注文された。特別扱いなしは望むところ。視察を受けた12日グレーディヒ戦で今季2度目の1試合2発を披露してみせた。

 W杯ロシア大会を目指すA代表のバックアップメンバーでもある20歳は、現在7戦5発で得点ランク2位につける。リーグのレベルの差はあるが、海外でプレーする日本人の中で今シーズン最も点を決めている。

 南野 狙いたいですね、得点王。まだまだ始まったばかりですけど、調子もいいですし、そこ(ゴール)でチームを助けたいんで。

 昨季は14試合3得点。6月の帰国時に「上のレベルに行くため2ケタ得点したい」と誓ったが、早くも5点で折り返し地点に到達した。目標を「得点王」に上方修正し、今後も天然芝4面、人工芝1面を有する最高級施設で、ビッグクラブへの飛躍を狙う野心家たちと競争する。「昨季から半分以上も選手が入れ替わった中、負けたくない、ナメられたくない思いで成長できている」。最終予選まで4カ月弱。南野の進化が五輪切符の行方を左右する。

 ◆南野拓実(みなみの・たくみ)1995年(平7)1月16日、大阪府泉佐野市生まれ。C大阪ユース在籍時の12年11月17日大宮戦でJデビュー。トップ昇格した翌13年7月6日の磐田戦で初ゴール。同年、Jリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞。14年にA代表候補入り。174センチ、67キロ。

 ◆南野の北朝鮮戦 昨年10月17日のU-19アジア選手権(ミャンマー)準々決勝で対戦。前半37分に先制されて迎えた後半38分、南野がPKをゴール左に決めて土壇場で同点に追いついた。延長戦で決着がつかずPK戦へ。先攻の北朝鮮は5人全員成功。日本も4人目まで成功して南野が登場したが、得点と同じゴール左を狙ってGKに止められた。南野は大会4戦4発と好調だったが、最後は不運な結果に。日本は4大会連続でU-20W杯を逃した。