日本(FIFAランク56位)は、アウェーでB組最大のライバル、オーストラリア(同45位)と1-1で引き分けた。バヒド・ハリルホジッチ監督(64)は、引き分けOKと受け止められても仕方のない消極的な采配で、進退問題の火種を吹き飛ばせなかった。日本協会が今月中にも技術委員会を招集し、手腕を検証することも判明。W杯出場へ続投か否かを探る。

 ハリルホジッチ監督は、引き分けに上機嫌で会見場に現れた。6日イラク戦と合わせた勝ち点4の獲得に「満足すべきではないか」と自ら及第点を出した。日本より調整日程が短く万全ではない首位オーストラリア。日本協会内にくすぶる、手腕への疑問符を吹き飛ばすチャンスだった。それを逃した。交代させる本田をゆっくり歩かせた指示に引き分け狙いの思惑がにじむ。前日までの練習も守備偏重。かつてのアジアの盟主が逃げ回った格好だ。

 同点の後半24分、サイドラインに相手FWケーヒルが立つと、敵地の約5万人が沸騰した。日本戦8戦5発の天敵が仕留めに来た。一方のハリルホジッチ監督は動かない。残り10分を切った後半37分に初めて清武を投入し、続けて浅野。最後は原口と丸山を代え、そのまま左FWに配置した。珍采配に指揮官は「オーストラリアはFKとCKでしか点を取れないチーム」と断定した一方で「本田と小林にはFK守備で役割を与えたから代えなかった。丸山はセットプレー守備のため」と説明。強気なのか弱気なのか分からなかった。

 背水のハリルホジッチ監督は1トップ本田の勝負手を打った。昨年のW杯2次予選から温めていた秘策だった。前日10日の会見では「ラッキーが試合を決める」と神頼みをし、ピッチでは本田頼みも「サプライズを起こしました」と自画自賛した。前半、本田が先制アシストで応えたが、最後はドロー狙い。試合後のロッカールームでの第一声「おめでとう」に対し、複数の選手は「何で勝ちにいかないんだ」と吐き捨てた。

 会見では「斎藤は重圧につぶされると思って使わなかった」と言ってしまう始末。「後半、監督から守備の方法を変える指示が出て流れが変わった」と話す選手も出るなど、求心力は低下しつつある。11月1日に予定される技術委員会が、続投か否かを含めて協議するため、今月に前倒しになる可能性も出てきた。

 最高責任者の田嶋会長は「(続投か解任か)僕がここで決めることではない」と明言しなかった。西野技術委員長は続投かと問われ「もちろん」と返しながら、「ただ、ロシアに行く可能性を引き上げるための検証はしないといけない」と断りをつけた。同委員長は今日12日に帰国する。当初はメルボルンから直接、U-19(19歳以下)アジア選手権が行われるバーレーンに、団長として向かうはずだった。突然の予定変更は何を意味するのだろうか。【木下淳】