【エンスヘーデ(オランダ)4日】岡田ジャパンが「無の境地」で大国に挑む。日本代表は5日、世界ランク3位の強豪オランダと対戦する。試合前日の公式会見で岡田武史監督(53)は「釣れたでいい、釣れないでまたいい、春うらら、という川柳があります」と、決戦に臨む心境を古風な歌で表現して、平常心を強調した。大敗を危惧(きぐ)するムードが漂う中、肩に力の入った選手たちの心を、岡田流の人心掌握術で解きほぐした。
気温20度を切り、紅葉がはじまったオランダの牧歌的な街で、岡田監督は決戦前の心境を歌で詠んだ。会見場は一瞬にして和み、緊張感から解き放たれた。作者を聞かれると「釣れるもよし、釣れなくてもよし春うらら、だったかな。調べておきますよ」と言って笑った。
相手は世界ランク3位の大国。W杯優勝経験こそないが、常に優勝候補に挙げられてきた。しかも今回はW杯最終予選期間中で、欧州リーグが中断しているため、バリバリの主力が出場する。日本の報道陣には地元の人も「ビッグ・ルーサーになれ」(大敗しろ)とジョークを飛ばすほどだ。
会見でもネガティブな質問が続いた。「ショックを受けた時にどうすべきか」の質問が飛んだ直後に、岡田監督は穏やかな表情で歌を詠んだ。そして「何かの本で読みました。これは禅で言うところの無、無心のひとつとして記憶しています」とその意味を説明した。
大敗を心配をする報道陣への切り返しであり、同時に肩に力の入った選手への激励でもあった。「試合がどうなるか分からないが、その時に考えればいい。不要な心配で、今の勢いを止めることはない」。総合力で圧倒的に勝るオランダに、攻守の切り替えの速さ、組織としての機能で対抗する。選手には気負わず、平常心で臨んでほしかった。「ノーチャンスなのか?」と、自身を鼓舞するように逆風をはねとばした。
これまで岡田監督は重要な試合になればなるほど緊張感を高め、異様な空気で会見に臨んでいた。しかし、今回はきわどい質問にも丁寧に応じた。世界4強への第一歩となる重要な試合を目の前に、監督自身が平常心を保てたことはひとつの進歩と言える。【井上真】

