日本代表のアルベルト・ザッケローニ新監督(57)が、いきなり守備の改革に乗り出した。4日、埼玉県内で合宿がスタートし、就任後初めて練習の指揮を執った。DF陣だけを集めて35分間も1人1人に細かく直接指導。堅守で有名なカテナチオの国・イタリアから来た指揮官が、4つの約束事を含めた「ザック流守備」を伝授した。

 グラウンドを包み込んだ霧が濃くなるにつれ、ザッケローニ監督の指示が熱を帯びてきた。最初は腕組みをして練習を見つめていたが、開始から1時間が過ぎるとDF7人だけを呼んで個別指導を始めた。その輪に故障で練習回避した闘莉王も加わる。4バックの陣形をとらせ、栗原、今野、内田…。1人1人に通訳を介して身ぶり手ぶりで「守り方」を伝授していった。ポジショニングから視線の送り方まで。異例の熱血指導は35分にも及んだ。

 ザッケローニ監督

 私がやろうとする情報は、いくつか(選手に)伝えました。期待が高いことは知っている。世界と渡り合うため、早くというよりは、きちんと(日本が)成長していくことを目的としたい。

 カテナチオの国から来た指揮官の「守備」は、実に緻密(ちみつ)だ。基本は4バックのゾーンディフェンス。大前提として中央からの攻撃を寸断し、相手をサイドに追いやるため、4つの約束事を徹底させた。

 (1)2人1組のペアで守れ!

 ボール保持者を囲い込むようにして、常に2対1の数的優位の状況で守る。

 (2)サイドバック(SB)は内側を見ろ!

 センターバック(CB)とペアを組むSBは、外側(タッチライン際)でなく中央を向いて守る。

 (3)自分のユニット(ペア)に集中するため、逆サイドはノーケアでいい!

 この日の練習にはなかったが、逆サイドへの侵入者に対しては中盤も含めた連動性で守る。

 (4)相手と常に1メートルの距離を保て!

 相手にミスが出た場合を除いては、常に間合いを取って守る。

 イタリアでは攻撃的サッカーを貫いてきた。だが、初めての日本でまず着手したのは、守備だった。W杯16強入りした岡田ジャパンは、闘莉王と中沢の不動のCBに、ボランチも加えた選手個々の判断で守ってきた。そこに「ザックの規律」が注入される。新星日本の初陣の相手はメッシ擁するアルゼンチン。14年W杯ブラジル大会に向け、日本が世界に通用する守備力を身に付ける。【益子浩一】