ザックジャパンの「ジョーカー」は、20歳のFW原口元気(浦和)だった。日本サッカー協会は25日、9月のW杯アジア3次予選2試合に出場する日本代表23人を発表。U-22(22歳以下)日本代表の原口が初選出された。アルベルト・ザッケローニ監督(58)が、左サイドから切れ込むスピードと技術を高く評価、予選本番の「切り札」として大抜てきした。日本は9月2日に北朝鮮(埼玉ス)、6日にウズベキスタン(タシケント)と対戦する。

 真顔の原口のほおが一気に緩んだ。さいたま市内での練習後、日本代表初選出を聞かれた時だった。「今までやってきたことが間違いではなかったと評価されてうれしい。これから上にいく。まだまだ上が目標」と白い歯をのぞかせた。

 J屈指の「高速ドリブル」が、日本の「切り札」になる。会見でザッケローニ監督が選出の理由を明かした。「右利きで左サイドから中に入っていくプレーがいい。スピードに乗った中での高い技術力が持ち味」。北朝鮮とウズベキスタンの守備は1対1には強いが、一瞬のスピードの対応に弱点がある。原口の高速ドリブルはまさに即効性のあるカード。「今まで通りチャレンジしていく。プレースタイルは変えない」と本人も宣言した。

 ユース時代から「怪物くん」の異名で注目されていた。17歳9カ月でJデビューした09年3月の鹿島戦。いきなりドリブルで仕掛けてゴール前へ突進。鹿島守備陣を驚かせた。初速からスピードが落ちないドリブルに、同僚の日本代表DF闘莉王も「あいつは持っている」と感心した。その闘莉王らに守備の重要性も説かれ、この2年間でプレーに幅ができた。今季20試合出場でチーム最多の8得点。前日24日には広島戦を視察したザッケローニ監督の前で先制点を挙げていた。

 同じU-22世代のFW宇佐美が今年5月のキリン杯でA代表に招集された際、「どうしてオレがA代表じゃないんだ」と悔しさをあらわにした。今月10日にはMF清武にもA代表出場で先を越された。その思いが発奮材料にもなった。

 日本代表FW本田は重戦車のような、香川は高い技術とターンでDFの隙間を縫うドリブルが武器。原口のような圧倒的なスピードで抜くドリブルはザックジャパンの中でも異彩を放つ。だからこそ大きなオプションになる。「どれだけ自分が出せるかが大事。おじけづいて(ドリブルではなく)パスを出すオレ…は、ないですね」。最年少の高速ドリブラーが、ザックジャパンのW杯への道を切り開く。【保坂恭子】