日本代表MF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が「新たな本田」となって、ピッチに立つ。日本協会は18日、「キリンチャレンジカップ2012」アゼルバイジャン戦(23日、エコパ)の代表23人を発表。6月のW杯アジア最終予選に向け、右膝などのけがが癒えた本田が9カ月ぶりに名を連ねた。この日、関東近郊での海外組合同自主トレに初参加した本田は、同戦のフル出場を志願。90分間を“ニュー本田”お披露目の場とし、最終予選に向かう。

 練習を終え迎えの車に向かう本田が、ふと足を止めた。横付けされた黒塗りの高級車センチュリーに乗り込む直前だ。ファンの求めに応じ、赤ちゃんを抱き上げ笑顔で写真に納まった。この世に生を受けて間もない命に、新たな自分を重ね合わせたのか-。けがが癒え、待望の9カ月ぶり代表復帰。周囲は復活と表現するが「復活というと“元に戻る”イメージ。戻るイメージは自分の中にはない」。アゼルバイジャン戦では進化した姿、“ニュー本田”を披露する。

 「オレは常に前進している。(右膝を)手術したことで、その時点から新たな本田になり得た。それを見てもらってどう評価してもらうか。前の本田には戻る気もない。新しい本田を、ここからつくっていく」

 まるで他人を評すように客観的に口にした「新たな本田」。読み解くヒントは、CSKAモスクワでの今季最終戦、13日ルビン戦で決めたゴールにある。大きく空いたスペースへの長いパスに反応し、相手DFに走り勝って決めた。従来の力強さに、スピードという新たな一面を加えた。アゼルバイジャン戦でも自らに課すのはやはりゴールだ。

 「点を取ることがひとつの課題。ピッチに戻るだけなら、普通にプレーしていれば戻ることはできる。そこを目標にしてきたわけじゃない。数字を取ることが大事」

 過去に興味はない。常に先を見る男は、厳しい最終予選の先にあるW杯本大会のイメージも膨らませている。この先1年間続く最終予選での戦い方についても提言した。

 「多分、オーストラリア以外の相手は引いてくる。引いてくる相手に、楽をして効率よく攻めるのも手ですけど、あえて難しい方法から崩していくことも考えたい。効率いい戦い方をしていると、先がないサッカーになってしまいがちなんで」

 珍しくテレビカメラの前でも報道陣に囲まれても雄弁だった。最終予選に向けた最初で最後の所信表明のように、約15分も言葉を発した。ベールを脱ぐ「新たな本田」とは何者か。ひと目で分かるものなのか。

 「見て分からないなら、それに値しないということ。見て、またさらに見てみたいと思わせるのが仕事。そう思われなくなったら代表に来る必要はない」

 自らにプレッシャーをかけるように、こう結んだ。ここまで言った。ピッチで答えを出すことも、本田の仕事になる。【八反誠】